初めての甲子園で打率4割7分4厘、2本塁打、8打点と大活躍した早実のスーパー1年生、清宮幸太郎内野手。準決勝の仙台育英戦に敗れ、決勝進出はならなかったが、聖地を大いに沸かせた。その清宮の打撃で特徴的なのが、タイミングの取り方だ。打席でバットを投手方向に大きく倒し、揺らしながら構えてボールを待つ。
ネット裏のプロスカウトからは「スイングの始動の遅れにつながることがある。高校レベルの投手ならば、多少の構え遅れはスイングの速さで対応できるが、プロのレベルでは真っ先に直される形だよ」と指摘する声もある。
だが、当の本人はどこ吹く風だ。
「打席でリズムを取るのもそうですし、手首をリラックスさせることにつながっている。リトルリーグの頃からこの形だった。変えられそうになったこともありましたけど、イヤだったんで断りました」
清宮は脱力に意味があると強調するが、強制的に修正する指導者もいるだろう。少年野球、学生野球では基本に忠実なフォームを指導するため、打席でバットを大きく揺さぶったりするフォームはあまり好まれないことが多い。
選手の個性を重んじる大リーグでは、ゲイリー・シェフィールド(元ヤンキースなど)が清宮のようにバットを振る構えで活躍し、フリオ・フランコ(元ロッテ、現BCリーグ石川監督兼選手)もバットを寝かせる独特の構えが“スコーピオン(さそり)打法”と呼ばれた。
早実の和泉監督が、清宮の打撃に対する考え方を尊重する方針をとっているのも、この独特な打法の背景にある大きな要因だ。
「結果が出ているんだから、今は変える必要はない。これからいい投手と当たって、彼自身が必要性を感じてから考えればいい。少なくとも、彼が早実にいる間は私から触ることはありませんよ」と本人の自主性に任せる考えだ。
前出スカウトは「これから好投手と対戦して壁を感じてほしい。改善すべき点は多いことは間違いない。逆にいえば、それが彼の伸びしろでもある」という。
ただ、ここまでの強打を見る限り、型にはまった打撃理論など必要ない巨大な素材であるという印象もある。