プロ野球の最年長勝利記録を持つ、中日・山本昌投手(50)が9月30日、名古屋市内で今季限りでの現役引退を正式に表明。レジェンド左腕の決断と同時に、球界は現役引退ラッシュとなっている。
中日では山本昌の他に、来季は指揮に専念する谷繁兼任監督、和田、小笠原。他球団でもコーチ兼任で野手最年長46歳の日本ハム・中嶋、西武・西口、オリックス・谷、阪神・関本らもユニホームを脱ぐ。
一方で、中日・岩瀬は減俸を覚悟して現役続行を宣言。中日・川上、ソフトバンク・松中も引退を否定、現役の道を模索している。
そんな現状を見ると、「球界に世代交代の波が一気に押し寄せた」という、月並みな言葉では片付けられない面がある。野球界が抱える厳しい現実が長寿選手を多く生み出し、簡単に引退勧告できない状況に陥っているのだ。
バブルの時代は、スター選手にとってセカンドライフはバラ色だった。評論家に転向すれば、テレビ局、新聞が争奪戦を展開、それなりの年収も保証された。だが、プロ野球がたまにしか放送されない今は、地上波でなくBS、CS中継で見るのが常識になった。それだけにギャラは安く、評論家生活は楽ではない。
阪神の来季監督の有力候補といわれる金本知憲氏は、スポーツ2紙と契約している。景気の良い話ではない。1紙ではそれなりのギャラが払いきれず、2紙で分担しているのが実情だ。
そんなシビアな現実があるだけに「しがみついてでも、1年でも長くユニホームを着ているのが賢明だ」というのが、ユニホーム組の合言葉になっている。球団もセカンドライフの現状を熟知しているだけに、貢献度のあったスター選手には肩叩きはしにくい。
だから数年間は働いていなくても現役続行を認める。選手も自覚するような限界線で引退勧告。今季はこの流れが各球団で合致したといえる。 (江尻良文)