プロ野球ドラフト会議前日の21日、今夏の甲子園大会やU−18W杯で活躍した関東第一高・オコエ瑠偉外野手(18)は、「指名されるのが、どこの球団であろうと自分自身でやるか、やらないか。球団が決まったら、その球団のために頑張る。甘い気持ちではなく覚悟をもって(指名を)待ちたい」と意を決していた。
今夏の全国選手権大会で株を上げた。一塁強襲の当たりで一気に二塁を陥れ、準々決勝では豪快な勝ち越し2ランと長打力も発揮。中堅の守備では広範囲をカバーするなど、粗削りながら走攻守に可能性を秘める。
父はナイジェリア人、母は日本人。抜群の身体能力と爆発的なスピードに注目が集まり、上位指名が確実視されることになったが、ここまでの道のりは順風満帆ではなかった。
中学2年の春、太ももの骨の付け根が股関節からずれてしまう「大腿骨頭すべり症」を発症。成長期の子供にみられる原因不明の病で、右足にボルトを2本入れる手術とリハビリで約2カ月間の入院を余儀なくされ、本格的な復帰には1年近くを要した。
その間には「野球に対する有り余ったパワーが“違った方向”に行ってしまったこともありました」。野球に打ち込めない鬱憤を晴らすため、友人たちと繁華街に繰り出し、遊び歩いたことがあったという。
病気が癒え、高校に進学した後も「飽きっぽくて、集中力が続かないことが多かった」(関東第一・米沢監督)。だが、2年の春にレギュラーの座をつかむと、練習に取り組む意識が変わり、メキメキと成長。持ち前の身体能力を発揮し脚光を浴びるようになった。
高校野球を終えた今も毎日7時間近くの練習をこなす。課題にあげていた体幹トレーニングとウエートトレで筋力アップを図り、体重は夏から約5キロ増の90キロに。
各球団から将来性を高く評価される一方で、「即戦力ではない」と“外れ1位候補”との評もあり、「うれしくもあるし、悔しい部分もある。1年目から1軍で戦えるようになりたいと思っています」と話していた。「将来はメジャーリーグでプレーしたい」。逸材の視線は、はるか先に向けられている。 (片岡将)