ソウル市は6年をかけ、建設費に2713億ウォン(約298億円)を投じている。総工費が3462億円に膨らむとも試算された日本の新国立競技場に比べればかわいいものだが、やはり「安物買いの銭失い」の感は否めない。
懸念された周辺の交通渋滞も解決していない。オープン日の4日に観戦にきた男性は、朝鮮日報に対し、「渋滞に巻き込まれて到着まで1時間半以上かかった。交通渋滞は野球を見たいという思いから我慢できたが、観戦中も不便で本当に腹が立った」とぶちまけている。
同紙は、韓国野球委員会(KBO)の許亀淵(ホ・グヨン)野球発展委員長が「21世紀に建てられた全世界のドーム球場の中で最悪」と話したとも伝えた。
『徹底比較 日本VS韓国』(河出書房新社)の著者でノンフィクションライターの高月靖氏は「過去、F1が開催された際、サーキットの建設が大幅に遅れたように韓国では、おおざっぱな感じで計画が作られることが多い」と明かす。
「ソウル市の担当者たちも野球場の管理運営の経験がないのに、専門家の意見を聞かず計画を進めたという。韓国役人の官僚的な面がドームに現れたのだろう。加えてソウルではまだ不動産価格が上昇中だ。ドームのようなハコモノのおかげで、地価がさらに上がることに期待するゼネコン業界などが、計画に加担したのではないか」
新国立競技場の再計画にあたって、これほどの反面教師はない。