21日に終わった大相撲名古屋場所で、最大の話題だった大関稀勢の里の「綱取り」は失敗に終わった。11勝4敗と来場所にもつながらなくなってしまったが、序盤戦で平幕に2敗しては話にならない。
そもそも、今場所は本当に「綱取り」場所だったのだろうか。夏場所は初日から13連勝して待望久しい「日本人優勝」に最接近したものの、白鵬、琴奨菊に連敗し13勝2敗に終わった。
全勝優勝の白鵬とは星2つ差で準優勝ともいえなかった。しかし、北の湖理事長(元横綱)や横綱審議委員会は「13勝以上の優勝」と、営業政策最優先の大甘綱取りラインを設定した。
横審の昇進内規は「大関で2場所連続優勝、もしくは準ずる成績」となっている。一時期横綱ほしさに「準ずる」を拡大解釈しすぎて、優勝経験なしでもなった双羽黒のように、いい加減な横綱も生まれていた。
しかし、平成以降はすべて「2場所連続優勝」で昇進している。その大原則をねじまげ、「日本人横綱」へ露骨なまでの昇進バックアップ。北の湖理事長などは場所が終わってもいないのに「12勝3敗で終われば秋場所で話題に出るだろう」と、ご執心だった。
13勝だ、12勝だ、とバナナのたたき売りではあるまいに、協会トップが簡単に口にしすぎる。「昇進は横審内規に則って決める」で通すべきではないのか。
大体、横審も口を出し過ぎる。横審はあくまでも諮問機関で協会から横綱昇進を諮問されたら、初めて答申を出せばいいのに、こっちも理事長に負けずに「13勝」とか「12勝」と勝手なことを言っている。
横審は昭和25年1月場所、東富士、照国、羽黒山の3横綱がそろって序盤で途中休場。世間からごうごうたる横綱批判を浴びた協会が“隠れみの”として好角家や学識経験者など名の通った人に依頼して設置したのが始まりだ。
何か問題が起きて、自分たちでは解決できずに設置する「第三者委員会」がいまはやりだが、横審はそのはしりでもある。しかし、「チャンピオン」を決めるのに、第三者にお伺いをたてるスポーツなど、どこの世界にあるのか。
横審委員が本場所を毎日観戦し、ふだんは稽古も見ているなら別だが、そんな委員がいるはずもない。横綱として適格かどうか、相撲の玄人である協会が、親方衆が一番わかることだ。
公益財団法人に生まれ変わろうというのに、いつまでも“隠れみの”をまとっている時代ではない。連続優勝にこだわらぬ、新たな基準を考え協会が堂々と自信をもって横綱を作れば、誰も文句はいわないだろう。 (作家・神谷光男)



