なでしこ熊谷を守れ!“合コン男”許せない

2011.07.28


世界の頂点から一転して謝罪。ボクは生中継した男を許さない【拡大】

 女子サッカーのなでしこジャパンが、W杯優勝という快挙を達成。東日本大震災で打ちひしがれた日本を元気づけてくれた佐々木則夫監督以下21選手は、まさに国民栄誉賞ものです。

 そんな中、無性に腹が立ったことが一つあります。決勝の米国戦で、最後にPKのゴールを決めたDF熊谷紗希選手を巡る「ツイッター騒動」です。ふざけるな! と言わせてもらいたいのは、もちろん、合コンの模様を実況中継した男子大学生です。

 騒動の内容は、多くの読者のみなさんもご存じでしょう。W杯優勝の金メダルを持って凱旋帰国した熊谷選手は、祝勝会を兼ねた合コンに参加。その際、同席した男子大学生が、熊谷選手の言葉尻をとらえて『監督このままじゃダメらしい』などとツイッターに書き込み、ネット上で「熊谷が監督批判」と大騒ぎになりました。

 熊谷選手はその後、会見を開き、書き込みは事実でないことを訴えた上で「軽率でした。もう合コンには行きません」と涙ながらに謝罪しましたが、さぞショックだったことでしょう。世界の頂点から、一気に奈落の底に突き落とされたようなもの。ボクは、このような経験をイヤというほど味わっているだけに、熊谷選手の気持ちが痛いほど分かり、そして大学生が許せないのです。

 西武の1軍打撃コーチに就任した2008年、日本一になり、注目されたことで、ボクは大きな“代償”を負うことになりました。飲みに行った先で、同席した方に「大久保コーチが野球賭博に関わっている」と週刊誌に密告されて大騒動に。結局、これはパ・リーグの予告先発というシステムを知らない人たちによる誤解が招いたものでしたが、球団だけでなく、世間に対するボクのイメージが悪くなったことは事実です。

 さらに昨年、菊池雄星投手とのトラブルなどで球団から契約を解除されると、ボクへの言われなき攻撃は拍車がかかりました。知らない人から電話で、「息子が大学にいられないようにしてやる…」などと脅迫されたほか、インターネット上では、ボクに対して「死ね」「ブタ」などという心ない書き込みが目立つようになりました。

 それからというもの、電話恐怖症になり、町を歩いている人がみんな敵に思えて、昼間は外に出られなくなりました。家の中に引きこもり、暗くなってからの散歩が何よりの楽しみに。電話の呼び出し音には、いまだに拒否反応が出ます。歩道橋を渡る際に苦労していたお年寄りに手を貸す際も、「これを見た人が、またネット上に何か書き込むのでは」と躊躇したこともあります。自分だけなら我慢もできます。一番の被害者は家族でした。

 ボクは妻との間に、大学4年生の長女、大学3年生の長男、高校3年生の次女と3人の子供がいます。どれも多感な時期で、しかもインターネット世代。当然、父親であるボクに対する中傷をあちこちで目にします。友達など周囲の目も気になるでしょう。

 ネット上の書き込み一つ一つに対し、ボクが「そんなことないんだ」と必死に言っても、子供たちの信頼はなかなか回復できません。74歳になる母親には「博元、母ちゃんと一緒に死んでくれ」と言われる始末。家族関係は、おかしくなっていきました。

 プロ野球の世界で、もまれてきたボクでさえ、精神的に追い詰められたのです。W杯前までは全国的にはほとんど無名で、“免疫”のなかった熊谷選手の受けた衝撃は計り知れません。日本サッカー協会からは注意され、その後のテレビ出演も自粛していると聞きます。人間不信に陥り、しばらくは外出することもできないでしょう。

 スポーツ選手、芸能人らへのこのような容赦ない攻撃について、人は「“有名税”だから仕方ない」といいます。だったらボクは、中傷に対する“還付金”をもらいたいくらいです。ボクらプロ野球選手は、もっと有名になって、女にモテたいとか、お金を稼ぎたいという欲があるから、多少の“有名税”には目をつぶりましょう。でも、熊谷選手らなでしこは違うのです。

 報酬は驚くほど低く、知名度もほとんどない。お金でなく、「サッカーが好き」という純粋な気持ちだけで戦ってきたのです。ボクは、2000年のシドニー五輪で女子ソフトボールチームのコーチを務めました。待遇の低さなど、女子選手を取り巻く環境は、女子サッカーとそんなに変わらないでしょう。だからボクには、女子選手の純粋でひたむきな気持ちが分かります。そんななでしこを安易な「つぶやき」で傷付けた大学生には、自分のやったことの重大さについて猛省してもらいたいものです。

 ただ、ボクがここでいくら訴えても、ネット上の悪意に満ちた卑怯な書き込みは、今後もなくならないでしょう。だからこそ、今は熊谷選手の気持ちをくんで、みんなで励まし、温かく見守ってやらなければならないということ。熊谷選手を守れ! ボクは声を大にして言わせてもらいます。

 ■大久保 博元(おおくぼ・ひろもと) 1967年2月1日、茨城県大洗町生まれ。水戸商高から豪打の捕手として84年にドラフト1位で西武入り。92年にトレードで巨人へ。「デーブ」の愛称で親しまれ、95年に引退するまで、通算303試合出場、41本塁打。2008年に打撃コーチとして西武に復帰。現在は東京・新宿区の自宅で野球塾「デーブ・ベースボールアカデミー(DBA)」を開校。DBAは生徒募集中、問い合わせは(電)03・5982・7322まで。

 

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