1873年のサッカー国際試合で、イングランドを下したスコットランドを初代王者と認定し、ボクシングのタイトルマッチと同様の方式で“王座”の変遷を追う「非公式サッカー世界王者(UFWC)」。昨年10月に初戴冠した日本代表は、いまだ無敗で防衛を続けており、わが国でも関心が高まっている。創始者の英国人ライター、ポール・ブラウン氏(37)に、人類に最も愛されているスポーツの新しい楽しみ方を聞いた。(聞き手・笹森倫)
――2003年にUFWCのアイデアを思いついてから、国際試合の膨大な記録をさかのぼって調べるのは、気が遠くなる作業だったのでは?
「国際サッカー、そしてUFWCは今から約150年前に幕を開けました。その黎明期の試合を調べるのはある種、考古学的な作業といえなくもない(笑い)。だからUFWCのマスコットもヒューイという恐竜です。ただ、実を言うと、最初期の試合の記録やレポートを“発掘”するのは、それほど大変な作業ではありませんでした」
――それは意外ですね
「国際Aマッチの記録というものは、たいてい本やネット上に残っており、黎明期の試合はほとんど英国内で行われたので、新聞のバックナンバーをあたれば、ある程度その試合の内容や背景を知ることができました。むしろ大変だったのは、1950年代から60年代前半にかけての試合の様子を調べること。というのも当時、UFWC戦線では南米勢が圧倒的な強さを見せており、ほとんどのタイトル戦が南米で行われたのです。そうした試合のレポートは、どのようなメディアにもなかなか残っていなくて」
――まさに“発掘”作業ですね。UFWC創始者から見て、この非公式なタイトル争いの醍醐味は何だと思いますか?
「私がUFWCで最も気に入っているのは、親善試合の見どころが増える、という点。両チームともにモチベーションを欠いている場合、親善試合はひどく退屈なゲームになり得ます。しかし、非公式ながらもタイトルがかかっているとわかれば、こうしたつまらない試合も興味をかきたてられる大一番に早変わりする。これは、UFWCの大きな魅力だと思います」
――UFWC創始者が選ぶ、歴代タイトルマッチのベストバウトは?
「私から言わせれば疑いなく、オランダ領アンティルが2−1でメキシコを下した試合ですね。試合が行われた1963年、私はまだ生まれてすらいませんでしたが、世界で最も小さな国の一つであったオランダ領アンティルが、世界有数の大国メキシコを撃破し、世界一に輝いたというストーリーには、強い興奮を覚えました。これは、おそらくUFWC史上最大の番狂わせであり、またUFWCを象徴するような結果と思えます」
――歴代最高の王者は
「多くの素晴らしいチームが登場した中で、現在までで最も多くのタイトルポイントを獲得してきたスコットランドの名前を挙げたい。UFWCの方式的に、黎明期から代表試合を戦ってきたイギリス勢のチームがランキングで非常に有利なのは事実です。とはいえ、スコットランドはそうした中でもイングランド、ウェールズ、そしてアイルランドといった同じ英国の代表チームを抑えてトップに君臨しているわけですから、彼らがベストであると言っていいのではないかと思います」
■ポール・ブラウン サッカーライター。1974年2月28日、イングランド北東部のニューカッスル出身。ノーザンブリア大で修士号取得。2003年に「サッカー非公式世界王者」を考案し、現在は公式サイト(http://www.ufwc.co.uk/)運営のかたわら、新聞、雑誌などに寄稿している。同タイトルの150年にわたる変遷をまとめた「サッカー非公式世界王者の歴史」(飛鳥新社)が8月3日に発売。「日本のメディアからのお仕事も絶賛募集中!」とのこと。サッカーはいうまでもなく、熱狂的なニューカッスルファン。
