なでしこに忍び寄る不安…メキシコ五輪男子代表に酷似

2012.08.17


もはや米国と五分にわたりあうなでしこ。次のために世代交代が必要だ【拡大】

 ロンドン五輪の視聴率(ビデオリサーチ)で、サッカーがベスト3を独占したという。ただし男子は1次リーグ初戦のスペイン戦の3位が最高で、上位2試合はなでしこジャパンだ。

 女子が男子以上に注目を集めるのは、国際的見地からすれば異常事態だ。少なくとも欧州、南米、アフリカなどの地域では考えられない。将来も、女子が男子並みの人気を集める国は出てきそうもない。もし現状が続くなら、日本女子は一貫して高水準を維持できる可能性が高い。

 しかし一方で気になるのは、今回のなでしこの道すじが、44年前にメキシコ五輪で銅メダルを獲得した男子代表に酷似していることだ。メキシコ五輪の日本代表は、1960年にドイツからデットマール・クラマー特別コーチを招き、8年越しの強化の集大成だった。

 選手発掘から始まり、代表は単独チームのように時間を共有。毎年、長期の遠征を繰り返した。64年東京、68年メキシコの2つの五輪はほぼ同じメンバー。グループリーグでは、移動と強豪との対決を避けて2位通過した経緯までそっくりだ。

 メキシコ五輪の快挙で、日本には第一次ブームが訪れた。メダリストたちは伝説化された半面、世代交代が滞りやがては長期低迷に陥った。

 もちろん、なでしこジャパンの佐々木則夫監督も、こうした歴史を熟知しているから今年に入って総勢75人の候補キャンプを行うなど、断層ができないように心がけてきた。しかし若手に故障者が続いたこともあり、ロンドン大会に出場したのは、全てW杯を経験したメンバーだった。前年のドイツW杯から上乗せされたとすれば、FW大儀見優季、MF川澄奈穂美が核として機能したことくらいだろう。

 2年続けて世界のファイナリストとなった選手たちは、どうしても別格視され、代え難くなる。しかし現なでしこは、ひとつのピークを迎えたと見るべきだ。このまま次の世界大会(3年後のW杯)まで代謝なく進めば、未来は危うい。

 メキシコ五輪当時の男子と異なるのは、女子の若い世代には多くのタレントがあふれていることだ。時代を築いた佐々木監督は、退陣が予想される。勇気ある航海を求められる次期監督は、重責を担うことになりそうだ。

 ■加部究(かべ・きわむ) スポーツライター。1958年生まれ。6度のW杯、8度の各大陸選手権などを取材。著書にデットマール・クラマーを題材にした「大和魂のモダンサッカー」、「忠成」、「サッカー移民」など多数。現在「週刊サッカーダイジェスト」、「サッカー批評」他でコラムなどを連載。

 

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