人柄通りファンに愛される ラッシャー木村さん

2010.06.15

 かつてはアントニオ猪木の因縁の相手として、ファンの憎悪を買った悪役。しかし、これといった反則を繰り返すわけでもなければ、凶器攻撃も、ファンに手を出すようなこともほとんどなかった。それでも容赦なく罵声を浴びせられ、自宅は投石やイタズラ電話に見舞われたという。そこまでして彼が悪役を演じなければならない理由は何だったのか。

 本名、木村政雄。北海道の高校を卒業後、角界入りを勧められ断りきれず、宮城野部屋に入門。十両昇格目前に「このまま進むと辞めにくくなる」と脱走、プロレス界に身を投じた。

 国際プロレスでは「金網デスマッチの鬼」と呼ばれ、エースとして活躍するも、団体は経営難から1981年に倒産。新日本プロレスに転出した。元プロレス記者の森本久氏はこう語る。

 「猪木さんは、木村さんに悪役を要求したんです」

 当時は日本人スターが充実、そこで木村さんに要求された役割は、猪木の“敵”以外になかった。

 「野球帽を被ったようなちびっ子ファンが『木村、ばかやろー、死んじまえ』って言うんです。小さい子供ですよ。それも巡業中、毎日ですからね。見ているこっちは気の毒でした。木村さんは何も言わないけど絶対に辛かったはずです」

 3年間の悪役生活の後、UWFを経て、ジャイアント馬場の全日本プロレスに移籍。ここでも当初は悪役だったが、次第にマイクパフォーマンスが定番化し、相手を茶化したり、なごませたり、お客さんを楽しませる特異なキャラクターに変身し人気を博した。

 「マニアの中には『あれは昔の木村さんじゃない』と言う人もいました。でも、人柄通りファンに愛されるキャラになれたからよかったです」

 6年前、惜しまれながら現役を引退した木村さんは5月24日、天国へと旅立った。享年68。今もノア事務所のあるディファ有明に設えた祭壇には、弔問のファンが多数訪れている。

(細田マサシ)

 

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