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立ちっぱなしで必死に働いたのに…キヤノンの契約切り

サラリーマン残酷物語

 大手光学機器メーカー「キヤノン」(本社・東京)は22日、宇都宮工場でレンズの組み立て業務などを委託している人材派遣会社との請負契約を来年1月で終了すると発表した。派遣会社も同日、約600人いる請負従業員に対し、契約の打ち切りを通告した。

 「やっぱり、ダメか…」。今年10月から請負従業員として働いていた鈴木浩二さん(42)=仮名=は、会社の説明を聞き、こう感じた。大分キヤノンでの1000人以上の大量解雇を聞いていたうえ、自身も少し前から「寮で待機」を命じられていたからだ。来年1月15日までに寮を出ることも同時に求められ、「こんな年の瀬に、どうすればいいのか」と途方に暮れた。

 鈴木さんは横浜市出身。地元高校の工業科を卒業後、産業機械の製造会社に入ったが業績不振から退社。食品関係の営業を経て、「物づくりがしたい」と昨年11月、人材派遣会社に登録した。

 翌12月、キヤノン勤務のために宇都宮に引っ越したが、手違いなどから県内のブレーキ製造会社に9カ月間派遣。やっと、秋から希望のキヤノンで望遠レンズの組み立てラインに配属された。

 「キヤノンといえば世界的大企業。信頼感も安定感もある。知らない土地に引っ越すことには抵抗もあったが、両親も4年前に他界しており、『宇都宮で新しい人生を切り開こう』と決めた。月給は寮費や保険料などを引くと10万円前後。朝から夕方まで、立ちっぱなしで必死に働いた」

 ところが、「100年に一度」という景気減速を理由に11月下旬、3つあった製造ラインは1つに減らされた。鈴木さんの担当部署はしばらく稼働したが12月上旬に休止となり、わずか3カ月足らずで解雇となった。

 寮は宇都宮郊外にある工場近くのため、市街地まで10キロはある。車を持っておらず、ハローワークに行くにもバスで30−40分、片道数百円かかる。部屋を探そうとしても、貯金は7万円以下。宇都宮市が貸し出す市営住宅も当たったが、空きは12戸しかなかった。

 「ホームレスという言葉が頭に浮かび、不安で精神的にきつい。私は独身だが、家族がいる元同僚もたくさんいる。派遣はもう懲り懲り。日本経団連会長(御手洗冨士夫・キヤノン会長)がトップの企業でも、これほど簡単に従業員を切り捨てる。政府の対策も、われわれ末端には届かない。こういう目には二度とあいたくない」

 最低気温が氷点下まで落ちたクリスマス、鈴木さんは手持ち資金を増やすため、30日まで年越し蕎麦をつくるアルバイトを始めた。年末年始はワンルームの寮で静かに過ごす予定だが、来年以降の見通しは立っていない。

ZAKZAK 2008/12/26

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