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聞き込みがなくなる日…ハイテクが変える捜査(上)

人間関係の希薄化でカンや経験の時代は去り

 中国地方ののどかな地方都市で、たった1年間に同じ手口の空き巣狙いが30件も相次いだ。刑事たちの努力にもかかわらず有力な手掛かりはなく、捜査は行き詰まる。局面を変えたのは切り札として投入された“新兵器”だった。

 「CIS−CATS(シス・キャッツ)」。警察庁が1月から全国の警察で運用を始めた情報分析支援システムだ。発生日時や場所、侵入手口など1件ごとのデータを入力すると、近くで起きた類似の事件がディスプレー上の地図に瞬時に一覧表示される。

 住民が目撃した怪しい車両やパトロール中の警察官が職務質問した不審者の記録に加え、過去に窃盗容疑で逮捕した容疑者も検索できる。事件ではこのデータベースが威力を発揮し、土地勘がある数人が浮上。身辺を洗いアリバイを崩す作業を重ね、1カ月後に50代の男を逮捕した。

 CIS−CATSに登録されているのは、発生状況や何百万人に上る過去の容疑者の写真や手口、特徴。聞き込んだ目撃情報から「ほおに傷」「東北なまり」と入力するだけで該当者をリストアップする。

 電話の通話履歴を解析し、相手や連絡頻度をグラフ化するなど多様な捜査支援の機能も備え、共犯者の割り出しは一挙に迅速化した。警察庁の坂口拓也情報分析支援室長は「データを抽出する手作業がデジタル化され、膨大な労力の節約につながる」と解説する。

【整備費用は数十億】

 システムの整備にかかった費用は数十億円。導入を急いだ背景には、深刻な大量退職時代の到来がある。「抜群のセンスと執念を持つ鳥飼刑事のようなデカはもういない」。ある警察庁幹部は松本清張の小説「点と線」で、事件を解決に導く老刑事を引き合いに嘆く。

 地域の人間関係の希薄化などにより捜査員は「聞き込みで情報を得られない」と悩んでいる。実際、聞き込みを端緒に摘発した事件は1993年に1万464件だったが、2007年は4820件まで減った。

 カンや経験に取って代わろうとする情報技術(IT)。坂口室長は「人や物の動きが見えにくい現代だからこそ。失われる技能を補うだけでなく、今まで手の届かなかった犯罪を解決する手段にしたい」と話した。

 止めどなく進む社会の匿名化、ベテラン警察官の大量退職…。捜査を取り巻く環境が厳しさを増す中、犯人を追う刑事の目や手足となる先端技術が重要性を高めている。ほころびかけた日本の治安回復をハイテク捜査が担う日が来るのか。最前線からリポートする。

ZAKZAK 2009/04/15

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