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東大変化系
〜脱エリートのお仕事〜

1.工学部大学院卒→魚介類販売店

2.経済学部→フリーター

3.文学部卒→個人投資家

4.文学部卒→作曲家

5.農学部卒→俳優

6.農学部→プロボクサー


1.工学部大学院卒→魚介類販売店


【「何かを実体験しながら学びたかった」】

 「へい、らっしゃい!」

 春の陽気に、日本有数の魚市場、東京・築地の場外市場で、威勢のいい声が響いた。声の主は、秋本佳佑(よしすけ)(26)。筋肉質で一見、ブルーカラーだが、昨年3月、東大工学部大学院修士課程を修了した超インテリだ。博士課程にも合格したが、昨年12月から魚介類販売店「まぐろ屋・斉藤水産」で働き始めた。

 環境流体力学、情報数理工学−。一般にはチンプンカンプンな科目を履修し、研究室で「二酸化炭素の地中隔離で…」などと発表していた秋本が、店頭で「メバルがうまいですよ。煮付けや塩焼きなど、脂がのってて本当においしい」と客に勧めている。

 「大学で学んだことは役に立っていないけど、観光客に英語を話せるので、重宝されてますよ」

 秋本は群馬県生まれ。高校時代を米インディアナで過ごし、平成11年、帰国子女枠で理科I類に合格、工学部に進学した。理系学生の既定路線どおり大学院にも進んだ。もちろん、英語は完璧(かんぺき)だ。

 朝5時に起き、6時には開店。接客しながら、仕入れの手伝いなどで重い荷物を運び、マグロの骨についた肉をスプーンで削り、魚を店頭に並べる。午後6時ごろまで働き、休日はほとんどない。月収は最低でも手取り20万円。同年代の平均給与よりは高い。

 「大学院時代、海外の農漁村で現地調査したら、文献と現実の違いに衝撃を受けた。効率が悪いかもしれないが、何かを実体験しながら学びたい思いが強くなった」

 悩みながらも修士論文は書き上げ、博士課程にも合格した。しかし、2カ月間、研究室に顔を出しただけで休学。一人暮らしのマンションにひきこもり、ニート状態に陥った。

 「飢餓の恐怖が身近にある農村で研究をしていたので、食べ物が人間生活の基本だと思う。だから、働きながら食べ物の知識を学べる職場を探した。研究が中途半端になったことでも悩んでいたので『腰をすえて何か成し遂げてみろ。そうすればなにかが見えてくる』と、アルバイトではなく、就職を選んだ」

 そんな折、求人情報に斉藤水産を見つけた。斉藤善明社長は「勉強をある程度やった男が、実社会の、しかも小売りという下積みをしている。骨がある」と評する。

 両親に対する後ろめたさはある。

 「自由に大学に通わせてくれた両親には、学んだことと無関係なことをしていて申し訳ないと思っている。正月にやっと伝え、反対されなかったことは、とてもありがたかった」

 でも、将来は? 「また研究に戻りたい、という気持ちはありますが、一番は農業に就きたい。研究も現在の経験も、いつか必ず役に立つはず」。されど、魚屋なのだ。=敬称略(澤田大典)


 ホリエモンや永田寿康前衆院議員を輩出した東京大学。レールの先では学者や政治家、高級官僚、一流企業のお歴々が走っている。でも、それだけが人生じゃない。軌道を降りて、自分の足で歩み始めた若者たちを描いてみる。



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