【少ない仕事求め行列、朝4時には職安へ】
大阪市西成区のあいりん地区(通称「釜が崎」)は、「街」の規模では日本最大といわれる。簡易宿泊所の客の大半が労働者だった街も、時代とともに変わりつつある。
JR大阪環状線新今宮駅から徒歩1分。あいりん公共職業安定所(あいりん総合センター)を中心とした800メートル四方の面積に、現在は約3万人の労働者がひしめく。
だが、午後9時ともなると、通りからは人気が消える。日中は仕事を求める労働者らで賑わう職安も、捨てられた自転車や車、ゴミ以外に目につくものはない。
景気は上向いているとされるが、「手配師をしている」という建設業の男性(58)は「名古屋などの他県での仕事が多くなっている。現金(日払いの仕事のこと)の求人は減っている」と話す。
通りには酒の自動販売機や木造バラックの屋台が並ぶ。「沖縄そば」という看板にひかれて暖簾をくぐると、沖縄県出身という50代から60代の男性4人が宴会の真っ最中だった。
「もう10年やっている」という男性店主に、400円の泡盛と、同じ値段の「ビフテキ」を注文したが、なぜか豚肉が出てきた。まずくはないが、肉というよりソースを食べている感じだ。
現場の帰りに寄ったという男性は「今は求人数が少ないから朝4時に並ばないと仕事はない。他県の仕事を求める人は2時から起き出す。夜に出歩く人はほとんどいないよ」という。
簡易宿泊所が集中する萩ノ茶屋の公園に行くと、炊き出しに並ぶ人だかりが出来ていた。西成署を一周するほどの長い列に並ぶのは大半が50代から60代の男性。宿泊所の玄関には生活保護、福祉年金受給を促す張り紙が目立つ。やはり高齢化は進んでいるようだ。
労働人口の減少について、「平成7年の阪神大震災で持ち直した建設業の需要が9年ごろに減少しだしたのが大きかった」と語るのは、「ビジネスホテル中央」など5軒の宿泊所を経営する中央グループの専務理事、山田英範さん(30)。バブル期には約227軒あった宿泊所も92軒に減った。
生き残りのため、中央グループは12年から外国人旅行客や一般客を顧客として呼び込むようになった。
当初は日本人ビジネスマンの利用が多かったが、英語版のホームページを開設した頃から外国人客が増加。中国語、韓国語版も開設し、「今では全体の3割を外国人客が占める」という。中央グループの集計によると、昨年は3万3791人の外国人客が訪れた。
一方で、労働者向けの業態を依然変えない事業者も多い。
「今、あいりんは二極化している。阪堺線(私鉄)を境に萩ノ茶屋界隈(かいわい)は昔と変わらない状態なのに対し、堺筋から天王寺に向かう43号線沿いの宿泊所は意欲的に労働者以外の客を呼び込んでいる」(山田さん)
新旧が入り交じって、また新しい街ができる。
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