−−新入社員を副社長に大抜てき−−
IT時代のジンザイ発掘(1)

潜在能力高い“学生社員”

 東京・秋葉原の電気街から少し外れたところに、パソコン部品総合商社「シネックス」という会社がある。3階建ての自社ビルは、通りに面する1階の外観が総ガラス張りで、シャレた喫茶店と見間違う。来年の新入社員をグループの関連ベンチャー企業の副社長に登用する制度を打ち出した会社だ。大胆な発想の背景には、“秒進分歩”といわれるIT(情報技術)業界の急成長と、昨今の学生の就職事情の変化がある。

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 シネックスは、コンピューター製品の大手卸売である米シネックスの日本拠点として平成7年に設立。ハードディスクなどの記憶装置をはじめ、CPU、メモリ、ネットワーク機など幅広い製品の輸入・販売を手がける。製品の販売先は、全国のパソコンショップなど約4000。インターネット商取引システムを駆使するなどIT関連事業に取り組む。

 一般と直接取引がないため、その名前になじみは薄いが、就職活動中の学生らの間ではよく知られている。というのも、同社は3年前の夏からビジネス経験を積んでみたい大学生を対象にインターンシップ制度を導入しているためだ。

 インターンシップには、在学時に実際の職場で就業経験を積むことで、自らの職業観を確立させようという狙いがある。米国では約7割の大学生が経験しているといわれ、日本でも就職協定の廃止の影響や政府が総合的に推進していることで多くの企業で導入され、文系学生の間でも広がってきている。

 ただ、その認識は各企業、大学、学生それぞれで違いがあり、単なる会社見学にとどまったり、無給という企業も少なくない。同社のインターンシップ制度は有給で、他のアルバイトをやめてインターンシップに応募し、大学と両立して社員になったという人もいる。アルバイトとの大きな違いは、社員同様に仕事を任せられ、責任があることだ。

 「手探り状態で始めたインターンシップ制度。2年前には、インターン学生が会議室に集結、『自分のやりたいことと違う』と団体交渉になったこともある」というのは同社の関戸明夫社長(51)。

 「さまざまな学生と接するうちに3種類ぐらいの学生が来ていると感じた。ひとつは起業家を目指して学生のうちに福利厚生や健康保険、伝票管理などを学ぼうと企業に潜り込む人。2番目は、電話をとるのも怖いという人。3番目は企画とかマーケティングをやりたいという人。それぞれ別の対応をしていかねばならないと思った」

 「IT事業関連は特に、新しいことを覚えさせるのに年齢は関係ない」と同社が費用を負担して米国に留学させている学生を含めるとインターンは現在約10人。その中には、夜の12時以前には帰ったことがないという学生や、潜在能力の高い学生もいる。そういった彼らこそ、今回話題になった「新入社員の副社長登用制度」の候補に最も近い存在だ。

 「見ていると見識、ビジネスの法律的知識などにおいても十分、関連会社の副社長なら可能ではないかと思った。ただ、全部やるわけでない。たとえば会計総務部門、人事部門なら問題なかろうと考えたんです」と関戸社長は説明する。

 副社長になれば、月30万円の給与のほか、業績に応じて年間最高360万円の賞与が支給される。一般社員との年収格差は最大で420万円になる。

 「若い人はわれわれより脳が劣化していない。IT産業といわれるこれからの時代を知っている。頭脳の能力は同じで、40歳と22歳の人を副社長にしても差はない。既存の考え方にとらわれない新しい時代にあったやり方」ともくろむ。

 潜在能力を見て、それに見合ったチャレンジの場を与えようというのが同社の基本的な考え方でもある。

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 「アドバルーン効果もあるが、優秀な人には早く大きなビジネスの舞台で可能性を体験してもらいたいのです」という関戸社長。「体験してもらうのが一番」というのは持論。実は、以前社長を務めていたまったく畑違いの会社で、独特の採用方法を展開して話題になったときも、この言葉を使っていた。

(清野邦彦)=敬称略


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