−−迷走する山口組−−
若頭射殺から3年(2)
若頭不在3年、異常事態の背景
山口組のナンバー2、宅見勝若頭を射殺し、山口組から絶縁された中野会。京都府八幡市の中野太郎会長(63)の自宅前では現在も京都府警による24時間態勢の張り付け警戒が続く。一時の緊張感は薄れたものの、中野会長のろう城生活はすでに2年10カ月。府警によると、お忍びで外出することもあるという。
中野会は昨年7月、暴力団対策法に基づき「指定暴力団」となった。組織を絶縁された者は足を洗って堅気になるのがヤクザ社会の掟だが、中野会長は「親分(渡辺5代目)から『謹慎しとけ』と言われただけ」と、自らの引退と組の解散を拒絶しているためだ。
山口組側は「中野会の指定は警察が勝手にやったこと」と冷静に受け止めているが、「絶縁した組の存続を認めないのが、山口組の掟。いずれ中野会との間で決着をつけんといかんやろ」(山口組関係者)との声がもっぱらだ。
事実、宅見若頭の射殺事件をめぐっては、すでに実行犯として中野会ヒットマン3人に懲役20年の判決が出されており、残る2人も殺人容疑で指名手配されている。中野会を絶縁した山口組としては、このまま中野会の存続を容認することは対外的なメンツからもできないわけだ。
だが、山口組は中野会への報復禁止の方針を強く打ち出している。このため、力づくではなく、話し合いによって、中野会長の引退・解散を図り、中野会問題に決着をつける方針だが、ネックとなっているのが、前回にも触れた後継若頭人事だ。
捜査関係者も「中野会長に引導を渡すのは、後継若頭の役目。それが若頭就任の条件だが、後継が決まっていない現状では、(引退勧告に)動くに動けないので、中野会問題は事実上、タナ上げ状態。最近の定例会でも中野会の『な』の字も出ていない」と指摘。
後継若頭人事が暗礁に乗り上げているのは、有力候補と目されていた若頭補佐の桑田兼吉・山健組組長(59)と司忍・弘道会会長(57)の2人が宅見事件後、相次いで銃刀法違反容疑で逮捕、起訴されたためだ。
桑田組長は、すでに今年3月6日、東京地裁で懲役7年の判決を受けている。控訴したものの、保釈は認められず、不在の状態が続いている。司会長も大阪地裁で係争中で、山口組の有力筋は「これまで若頭人事が最高幹部会の正式な議題として協議されたことは一度もない」という。
一般企業でいうと、若頭という役職は「専務」にあたる。当然、「社長」である親分が次の若頭を指名できるが、過去の山口組の慣例からは、まず最高幹部会で協議したうえで、若頭を選出し、親分の承認を得て正式決定する運びになっている。だが、最高幹部会では不在の2人に遠慮してか、協議を行えないでいる。警察当局の新・頂上作戦が的中したわけだ。
後継若頭が未決定のため、宅見若頭の組葬も開催のメドがたっていない。通常、一周忌までに組葬が営まれる。山口組執行部では、生前の宅見若頭の功績から射殺された直後に「後日、改めて組葬を営む」と決定・通達したが、「組葬がのびのびになっているのも、新しい若頭(かしら)が執行委員長を務めることになっているからや。若頭が決まって、中野会問題にかたがついたら組葬を営むことになるやろ」(別の山口組関係者)という。
若頭ポストが3年近くも空席というのは、山口組の歴史をひもといても過去にない。その意味でも異常事態なのだが、暴力団担当のベテラン捜査員はこう言い切る。
「決まらん理由は有力候補が捕まっているだけやない。宅見があまりにも偉大すぎて、後継者が育たんかったのが原因や。3代目の田岡が死んで、4代目の最有力だった山健(山本健一若頭)が急死した時と同じで、抜きんでた実力者がおらんからや」
山口組は4代目をめぐり、一和会との分裂を起こし、骨肉の争い「山一戦争」を繰り広げた。苦い経験を知る執行部としては、現状を維持するのがやっとなのだろう。
(山口組取材班)
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