−−ラーメン立志伝−−
丼に賭けた男たち(2)

京都「天下一品」・下

 「『何や、何が入ってん、なんのスープなん?』って。皆さん、ビックリしはるわね。で、『どうなん?』って聞いたら『うま過ぎる』て」

 木村勉代表は最初に天下一品ラーメンを食べたお客の反応をこう話す。

 個性的なスープの噂は、またたくまに京都中に広がり、わずか20坪、33席の店で1日1000杯、日曜などは1日1800杯売れる大繁盛店となった。単純計算で60回転だ。

 「もう、戦争ですわ」

 すぐに2号店を出す計画が持ち上がるが、スープは本店で仕込むシステムを取った。支店の味を変えない意味とスープの秘密が外部に漏らさないためだ。事実、様々な人間がスープの秘密を探りにきた。中華料理のキャリアが10年、15年という料理人もいた。

 「ところが、そういう人は突然、『辞める』いうんです。『なんでや?』って聞いたら、『実は味盗もう思うて入ったけどマネできへん』いう」

 あるとき、ひとりの男性が1億円の現金を持って木村氏の前に現れた。

 「突然、『スープの秘密を教えてくれ』いいはりますのや。有名な料理人はたくさんいらはりますけど、ひとつの味を教えて1億もろうた人っていままでありますかな、私だけやろ」

 結局、これまで外部の人間で天下一品のスープの秘密を知っているのはこの人物だけだそうだ。現在もスープの秘密を知るのは製造、管理する本社工場の責任者3人のみ。

 そして、年商80億円という莫大な収益をあげる契機となったのがフランチャイズ(FC)化だ。以前は関西圏だけだったが、最近は関東圏にも多く見られるようになった。全国で約190店舗に及ぶ。

 「最初はFCはするつもりなかったんです。自分とこで出来る範囲でええと。ところが、いろんな人が教えてくれ、教えてくれきはりますのや。わし、断り切れんかった」

 FC店は人気の割には少ないようにも感じる。

 「やりたいいう人全部受けてたら、1000店楽に超えてます。でも、そうしたら同じ店で食い合いになる。それではあかんのです。そら本部は加盟料取って、えらい儲かります。でも、FCオーナーにも儲けてもらわなあかん。天下一品の名で売る以上は1日最低400杯売れる店でなかったら認められへん」

 さらに、自分で店に立つ人間しかオーナーになれない。「金持ちで人にやらせてる人は管理できへん。自分で借金してやりはる人は、そら真剣でっせ。『いらっしゃい』の言葉でも違います」。FC化は最終的に300店舗までしか増やさない計画だという。

 どうすればラーメン店で成功できるのか。

 「そら簡単ですがな。たった3万7千円の金で、私のような学歴のない人間でもできたんです。まず最初に夢を持つことです。大きな夢がいい。で、それに向って頑張りなはれ。妥協したらあきまへん。徹底的にこだわることです」

 事業展開も盛んで、近日には関西圏での直営店も3店オープンする予定だ。

 新規オープンのときには社長自ら厨房に入り、現場に指示を出す。

 「さすがに、社員からもうやめてくれ言われます。でも、現場が楽しい。私、毎日が楽しいんです。天下一品が大きくなるんわ、これからですよ。見ていておくれやす」

 現在65歳。氏のラーメン立志伝はまだ終わらない。



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