−−カンヌ、ハリウッド最前線−−
世界に挑む 日本映画の風雲児(1)

世界を舞台に活躍する2人の日本人プロデューサー

 第54回カンヌ国際映画祭−−。20日の最終日までに注目のコンペティション部門で世界11カ国23作品がノミネートされた。ここに、昨年の「EUREKA」に続き青山真治監督の「月の砂漠」を送りこんだのが“映画祭男”の異名を取るプロデューサー、サンセントシネマワークス代表の仙頭武則(39)。片や、ヴェネチア国際映画祭グランプリの「HANA−BI」や「BROTHER」で“世界のキタノ”を発信、ハリウッドで成功をおさめつつあるのがオフィス北野代表の森昌行(48)。世界を舞台にバトルを繰り広げる2人の戦略と舞台裏と最前線に迫る−。

◇WOWOWが日本一の「映画会社」

 ハリウッドで、カンヌで。好対照の日本人2人が旋風を巻き起こしている。

 仙頭は、「萌の朱雀」「リング」「らせん」「ユリイカ」等のプロデュースで知られ、カンヌ、ベルリン等の国際映画祭で合計15カ国60賞受賞を誇る日本映画界の風雲児だ。

 元々は、大手の鉄鋼メーカーNKKの営業マン。WOWOW(日本衛星営放送)へ転職後、映画製作部門を立ち上げる。「量が質を生む」を信条に8年間で32人の監督と組み、44作品をプロデュースしてきた。サンセントシネマワークスは、WOWOWが100%出資の製作会社だが、今やメジャーの映画会社を抜いて“日本最多の製作本数”を誇る。

 「映画を完成させ、その映画を1人でも多くの人に見てもらうために、ありとあらゆることをする。それがプロデューサーの仕事。今、この会社で僕に意見を言える人は誰もいない。僕が最高の決定者」との仙頭の言葉に自信とプライドがみなぎる。

 開催中のカンヌ映画祭には、「月の砂漠」など、自らプロデュースした計3本の映画を送り込んだ。

◇たけし監督の育ての親

 一方の森は、ベルリン映画祭グランプリ受賞の「HANA−BI」や「BROTHER」でビートたけしを「世界のキタノ」に押し上げた敏腕。

 いわば、たけしの“影の立役者”だが、元々は、テレビ朝日の美術部で大道具や小道具の仕事に就いていた。やがて、バラエティー番組のアシスタントディレクターに。「ADなんか人間じゃない」といわれた過酷な時代に“残酷物語”を体験するも、「逃げるのは嫌だ」と負けん気でディレクターになった。

 “運命の人”たけしの番組を担当した縁で、オフィス北野の設立に参加。たけしから、「役員の数が足らないんでさ、ハンコ貸してくれない」と誘われたのがキッカケだった。先見性のあるたけしのインスピレーションを刺激して、今や北野組の大番頭だ。

 「作品主義」の仙頭に対して、森は「作家(監督)主義」を唱え、徹底して「北野武」にこだわってきた。そして今や、そのブランドは世界に名を轟かせている。

 「この会社ぐらい“誰のために”という利害関係がはっきりしている会社もない。『オフィス北野』という社名だしね」と森。

 「海外で評価を勝ち取り、その勢いで国内で公開する」といった映画戦略は2人とも共通しているが、「動の仙頭」に「静の森」は、あまりに対照的だ。

(映画ライター 桐野萌)=敬称略


追跡TOPへ 次へ
ZAKZAK