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あなたも犯人に…(1)
刑事で勝訴が、民事で逆転
「主文。原告の請求をいずれも棄却する」−。裁判長のくぐもりがちな声が東京地裁611号法廷に響いた。刑事裁判での無罪が確定し、痴漢冤罪が証明された後、民事で下された“逆転敗訴”。原告代理人は「全面的に控訴する」と反発した。痴漢被害・捜査・裁判への問題提起にまで問題が広がった今回の裁判は、舞台を高裁に移すが、なぜ、痴漢冤罪は続発してしまうのか。 「原告の痴漢行為はあったと認定できる」。判決理由で、須藤典明裁判長はこう話した。 原告・窪田義晴さん(30)=仮名=側の代理人弁護士の顔が怒りのためか、紅潮してくる。請求の棄却以上に、刑事裁判での事実認定そのものを根本から覆す判断がなされたのだ。 事件の経緯は【別項】の通りだが、公判では、被害者とされる小川美紀さん(19)=同=の5回に及ぶ痴漢逮捕−示談歴が明らかになった。 ◇“被害者”には仰天の過去… 99年9月27日の痴漢被害で、慰謝料20万円で示談した後、同11月1日、同20万円▽2000年2月22、24の両日、同50万円▽6月30日、同70万円▽01年5月18日、同30万円−の5件。ほかにも被害にあっていたが、犯人に逃げられたケースや、犯人が高校生で処分結果を知らされず、示談していない場合もあるという。 こうした事実から、義晴さん側は刑事裁判での無罪確定後、「示談金目当ての仕立て上げられた悪質な犯罪」とし、美紀さんを『痴漢メーカー』と断じていた。 刑事、民事訴訟を通じて、義晴さん側は「痴漢はしていない」、美紀さん側は「痴漢はあった」という主張を貫き通してきた。民事にあたっても、本人の供述調書など刑事とほぼ同じ資料が証拠として提出されたが、他の痴漢事件同様、物証などの客観的な証拠に欠けるため、両者の主張の信頼性が極めて重要な判断材料となった。 そして、民事で下された判断は刑事とは180度異なるものだった。 ◇被害者の供述を信用できる、と判断 刑事の公判では「変遷しており、信用性がない」とされた美紀さんの供述について、須藤裁判長は「自分の言いたいことを言えない性格で、気後れして訂正を言い出せなかった」と判断。「仮に部分的に事実と違う部分があっても、被害の核心部分が信頼性を失うことはない」と、その供述を信用できるとした。 また、この事件以外の痴漢被害にも「加害者側は痴漢行為を認め、謝罪している」と、義晴さんに痴漢されたという美紀さんの主張を「信用性を高める」と判断した。 一方、義晴さんには「あいまいな供述を繰り返し、信頼性に欠けるものであることが著しい」と指摘し、「痴漢行為をしていた」と断定した。 判決後、当然ながら両者の反応は実に対照的だった。 「正当な判決で、痴漢行為を行ったという上での棄却に意義がある」(美紀さんの代理人) 「身柄拘束され、否認を続けるのは大変なこと。こんなことがまかり通るのでは痴漢冤罪はなくならない」(義晴さんの代理人) 被害者と加害者の供述の信用性のみをよりどころに下された判決。では義晴さんの供述のどこが、裁判官の心証を損ね、信用性に欠けると判断されたのか。義晴さん側は、高裁で今回の判決を覆す証拠を用意できるのだろうか。
(兼松康)
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