−−写真集今昔物語−−
ヘアからソフトまで(1)

松坂慶子「さくら伝説」の裏

松坂慶子「さくら伝説」発売会見 ◇大手書店で売上げ上位に  出版界がかつてない不況に直面している。「本が売れない」底流には、活字離れ、インターネットやiモードなどの新メディアの台頭があるとされるが、最も大きな痛手を受けている出版物が写真集だ。

 約170万部という爆発的な売り上げを記録した宮沢りえ(29)の写真集『Santa Fe』(撮影・篠山紀信)など、90年代初頭から始まったヘアヌードブームも沈静化し、マスコミで話題となる作品も久しく登場していなかった。

 だが、8月8日に発売された女優、松坂慶子(50)の『さくら伝説』(同・毛利充裕)は、大手書店の売上ランクで軒並みベスト10入りする快挙を果たした。

 同写真集の編集・発行人で、プロデューサーの田中篤は、撮影の舞台裏をこう打ち明ける。

 「あらゆることが特別の特別。写真集ブーム全盛期でもこれだけの作品は作っていないはず」

◇出版までに1年

 企画段階から出版までに約1年。本人交渉の前には「女優・松坂慶子」に対するマーケティング調査も徹底して行ったという。

 「制作費を計算するデータが必要でした。被写体的に大丈夫だろう、という気持ちはありましたが、こんな時代ですから採算が見えないと勝負できません。で、勝負に出たということです」

 話を煮詰めていくうち、通常の写真集の枠では収まらないものに企画は膨らんでいった。監修・原作は、なかにし礼、スタッフには映画と同様に照明、美術、大道具、小道具の専門家が入るというこれまでにはないスタイルとなった。

 撮影前、松坂はエステ、ダンス、ジムなどに通い、3カ月で7キロを落とした。これは制作側からの希望ではなく、自ら率先しての女優としての行動だったという。

 表紙で写し出されている山桜の開花を待ち、総スタッフ約60人の前代未聞の撮影が始まった。

 作品では50歳とは思えない見事な裸体だけでなく、咲き誇った山桜の手前で赤く咲いている彼岸花など、細かな小道具も印象に残る。

 「花の季節があいませんよね。実は精巧な造花なんです。池に浮かぶ蓮の花も…。彫り師の仕事部屋も実はセットを作りました。ものすごいお金が約20日の間にドンドン出ていくわけです。もう途中から、ここまで金かけたんだからどうにでもなれ! という考えになりました」

◇制作費だけで1億円

 制作費は、本人ギャラを含まず1億を欠ける程度だという。

 「裏方も一流の方ばかり。ギャラに関しては随分協力してもらいました。もし、普通にお支払いしたら、確実に億を超えてしまったでしょう」

 この作品に関して、版元(バウハウス社)からは公称部数さえ発表されていない。

 「部数を公開すると、すぐギャラがいくら入ったとか泥臭い話になるでしょう。これまでワイドショーなどで言われているのはすべて推定部数。まあ、各書店の売り上げランキングに入ったことで売れていることは確か。僕個人としては、今、ホッと胸をなでおろしている感じ」

 取材後、田中に顔写真撮影を求めるとやんわりと断られた。

 「僕が女優サンと会っただけで、すぐにヘアヌード写真集の話ではないかと週刊誌に書かれてしまうんです。それでダメになってしまった企画もあります。あくまで僕は陰の存在ですから」

 女優は女優、裏方は裏方…。売れない時代に売れるモノを作るには、それぞれの役割に徹した姿勢が必要なのか。



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