−−癒しブームを追え!−−
なぜハマるのか(4)

そば打ち

男の趣味、余暇に麺を打つ人が急増している
男の趣味、余暇に麺を打つ人が急増している
◇作って食べる楽しみ

 ここ数年、手打ちそば教室が盛況だ。労働組合がレクリエーションとして取り入れる例も増え、麺打ちキットまで発売された。そば作りは奥が深いながら、未経験者も入りやすく、モノづくりの喜びと食べる楽しさが癒しに通じるという。

 木鉢の中のそば生地を全身でこねる。ひんやりとした感触。こねあがった生地をたまにする。のしてたたんで、そば包丁で切る…。

 東京都葛飾区にある手打ちそば教室「江戸東京そばの会」。平成8年からスタートし、土日を中心に、サラリーマン、OL、家族連れがそば打ちに挑戦している。

 最近は、「そば打ち道場」などと銘打ち、社員やその家族向けレクリエーションにしている企業の労組も多い。

 「そば打ちは職人の世界で入りづらいと思われるが、難しいわけじゃない。そば粉が違うとこんなに味が違うのかと興味もわいてくる」と主宰する貝塚隆雄さん。

◇リストラ組がプロを目指す

 趣味が高じ、プロコースで、そば職人を目指す人や、リストラにあって一念発起し、開業しようとするサラリーマンの姿も…。

 そば打ち体験について、貝塚さんは「これまで何もしなかったサラリーマンが、自分の作ったそばを家族がおいしいと食べてくれると気分がよくなって、ハマってしまう。昔の故郷の情景が浮かんでくるような癒しがある」と話す。

 雑誌が、そば特集を組むと売れ行きがよく、そば打ち指南書も多い。

 今年4月、ムック「日曜日に楽しむそば打ち」を出版したエクスナレッジの担当編集者は「そばを打ったときのひんやりとした感触が気持ちいい。恍惚としてしまうところがある」という。

 同書の著者、井上明さんは約3年前から手打ちそば講座などを手がける「川越蕎麦の会」を主宰。その道のプロとして、ネットでそば情報を発信している。

 「うどんと比較されるが、まどろっこしくない。それでいて、粉が形になって、そばになる楽しさ。香りは鼻腔を刺激し、粉をたまにしたとき、赤ちゃんの顔のような手触りがある。打つたびに喜びと発見がある。まさに癒し」(井上さん)

 講座には、「高度成長期に忙しく働いたという人、それまで土日にゴルフをやっていた人も多い」という。ハマると道具へのこだわりが出てくるようになる。このあたりもゴルフと似ているといっていいだろう。

◇大手メーカーも参入

 東急ハンズでは平成11年秋、国内メーカーと交渉し、従来に比べ安価な、のし板、のし棒、こま板、包丁のソバ打ち4点セットのオリジナル商品を開発、販売。今も全店合わせ、月100台が売れている。

 同社の広報担当は人気の理由を「男心をくすぐる、ウンチクを語れる、こだわれる、探究心」と分析する。

 10月下旬、家庭で麺作りができるキットを売り出したのは味の素。麺切り包丁や麺棒など道具一式とそば、うどん、ほうとうの粉、打ち粉など材料のほか解説ビデオをセットで発売した。年間2億円の売り上げを目指している。

 味の素の調査では、父親がやってみたい料理の第1位は「麺を打つ」という。同社では、公立学校の完全週休2日制もあり、家族とのコミュニケーションを図ることを提案する。

 「手作りの楽しさは人それぞれですが、作業中の充実感、完成したときの達成感、まわりに評価されたときの満足感、次のステップへの向上心がポイント。このような『心の満足』が『癒し』にもつながるのでは」(東急ハンズ広報担当者)

 これからの季節、国産の新そばが出始める。あなたも、この1年の疲れを癒すため、年越しそばを自分でつくってみてはいかがだろうか。

(清野邦彦)=この項おわり


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