−−ふざけるな−−
雇用・能力開発機構の闇(5)

「しごと館」より、仕事を!

「仕事」を知るのはいいことだが、今の時代には立派過ぎる箱モノだ
「仕事」を知るのはいいことだが、今の時代には立派過ぎる箱モノだ
◇職業体験と学習の場

 殺風景な関西文化学術研究都市の精華・西木津地区(京都府)に、全面ガラス張りの巨大な建物が出現する。8.3ヘクタールの敷地内に地上3階建てで、延べ床面積3万5000平方メートルの「私のしごと館」だ。3月30日のプレオープンに向け、内装工事が進められている。

 大阪市内から約1時間、京都駅から30分を要し、さらにバスで10分。立地が悪いうえ、「しごと館」という名称ながら、労働者を対象にした施設でもない。

 「2月3日から始めた見学会に、10日間で小・中・高校関係者を中心に200団体、約800人にお越しいただいた。前向きな返事を頂いた学校もいくつかあります」

 運営に当たる財団法人・産業雇用安定センターの担当者が説明するように、修学旅行や総合学習の一環として使う職業体験と学習の場なのだ。

 土地、建物、館内設備を合わせた総工費は約581億円。初年度の運営費には約25億円の予算が投じられる。ハコもの事業が批判されるなか、厚生労働省と特殊法人の雇用・能力開発機構が建設した巨大なハコ。

◇開館前から20ン億円の赤字

 元をたどると、平成5年、「働きがいと技能尊重に関する有識者懇談会」が労働省(当時)に出した報告書に行き着く。

 就職が売り手市場だったバブル期は、特定の職業に就かない「フリーター」を生んだ。「安易な離転職は技術・技能の蓄積面で損失が大きい」と危惧していた労働省などは、懇談会が提言した項目の一つ、「あらゆる職業、技能の姿や変遷を展示する施設を設置し、職業選択に関する情報を提供する」に着目。宮沢内閣の景気テコ入れ策だった新社会資本整備構想とも合致し、同年中に用地を買収。同館建設に踏み切った。

 しかし、時は流れ、今やデフレ不況のドン底。収益性のない事業には厳しい目が向けられるが、収入は200円(小学生)から700円(一般)の入館料と、体験料(300円)がすべて。年間40万人の来場見込みで1億5000万円前後。開館前から20ン億円の赤字が確定しているのだ。

 これに対する厚労省の答えは、税金を税金と思わぬ無責任なもの。

 「勤労者福祉施設のように独立採算を想定した施設とは異なり、学校・職業能力開発施設等と同等に公的な目的のために設置したもの。国からも交付金も受ける」

 『スパウザ小田原』などのようなレジャー施設ではない。将来を担う若者のためには、無尽蔵に税金を投入してもいい−という考えだ。

 土壌改良技術者、トレーダー、石切出作業者、葬儀師…。館内には、学生では思いつかない職業まで703種を網羅した職業データベースが備えつけられ、若者に仕事の奥深さを教える。

 ただ現在、社会問題になっているのは、過去最悪の失業率5.5%、331万人の大半を占める中高年の雇用をどうするかのはず。税金の使い方が間違っているのだ。

 館内の無料ゾーンには、ハローワークと結び求人情報を照会するパソコンもあるが、仕事の斡旋はしない。となれば、失業者が同館へ足を運ぶことは少ないだろう。

 「581億円を目先の雇用安定施策に使ってくれ〜」という失業者の怒りが聞こえてくる。

(伊藤洋一)


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