−−激烈!−−
大不況バトル(4)

スクーター、国産でも激安実現

こんなに安いスクーターが出ては、ますます大事に乗らない?
こんなに安いスクーターが出ては、ますます大事に乗らない?
◇チョイノリで日本一周!

 デフレ時代の勝ち組スズキが先月、国産で5万9800円という超低価格の原付きスクーター「チョイノリ」を発売し、原チャリの激安バトルが一段と過熱してきた。中国生産で10万円を切るスクーターを投入し、一歩リードしたかに見えたホンダ、台湾生産のヤマハとの三つ巴バトルは、どこが制するのか。

 今月2日、東京・新宿中央公園に、男性約30人が集まり、異様な熱気のなか、「チョイノリ」に乗った“小猿”と呼ばれる青年が日本半周の旅をスタートさせた。

 チョイノリは、リアサスペンションや燃料計まで省くなど従来のスクーターと比べ、装備や部品を3割減らし、ボルト締め付け個所も半減。重量約39キロ、燃費がリッター76キロという性能で、電動アシスト自転車並みの低価格を実現した。ただ、「最高速度は40キロほどで、自宅から半径数キロ以内の買い物などにしか使えない」(関係者)

 だが、その大胆な発想がうけ、出足は好調で、同社は月間2000台の販売を見込む。

 インターネットの掲示板でもバイクファンらが騒ぎ始め、「このバイクで、日本を半周してもいい」と冗談半分に語る青年まで出現。これに、「バイクを提供する」という者が現れ、「俺も援助する」との賛同者が続々と登場。

 結局、全国からのカンパだけで、東京から九州、四国を回り、3月下旬、東京に戻る“壮大”なプロジェクトが冒頭のように動きだした。

 注目したいのは、なぜ、これほど安いスクーターが誕生したのかだ。

◇ホンダは中国製、ヤマハは台湾製で勝負

 スズキは昨年2月、従来のスクーターの無駄を省き、店頭で10万円を切る「レッツII」(11万2000円)を投入。だが、その後、ホンダは中国生産で国産とほぼ変わらない性能と装備を備えた「トゥディ」(9万4800円)を発売した。

 東京・上野のバイク販売店責任者は「『トゥディ』は『レッツII』に比べ装備も良く、品質に問題もなかったので、完全にホンダが一歩リードした」と話す。

 これに対し、スズキの鈴木修会長は「日本でできることはある」と国産にこだわり、不要なものを省くのではなく、必要最低限なものを積み上げる逆転の発想で、チョイノリを作ったのだ。

 50ccスクーターの国内生産を止め、台湾生産に切り替えているのがヤマハで、「ホンダの中国製は実用上の問題はないが、内部を細かく見るとネジ一つのクオリティーなど日本製とは品質に差もある。でも、ヤマハの台湾製は日本製と品質が遜色ない。だから、速いスクーターを求める顧客はヤマハを選んでいる」(バイク店責任者)。

 それでも、ヤマハは国産より1、2万円安いだけで、いまだ10万円以上。ライバルとの価格差は大きく、「今秋にも10万円を切るモデルを出すと聞いている」(同)。

 メーカー側は激安スクーターの投入で、新しいユーザーの掘り起しを狙ったが、「現実は『トゥディ』が出て、ホンダが国内で作る上級スクーターが売れなくなった。スズキも『チョイノリ』で『レッツII』のお客さんが食われている」(同)といった皮肉な結果になっている。

 激安スクーターの登場で、販売総数こそ微増となっているようだが、メーカーの利益は減るばかり。今後、本当に生き残りをかけた死闘が展開されるのは必至だ。

(伊藤猛)=この項おわり


戻る 追跡TOPへ
ZAKZAK