−−SARS大パニック−−
〜見えない恐怖〜(4)
対応バラバラ、現場の不安
 感染者を搬送するための専用救急車両 |
◇厚労省も緊急マニュアル
アナタの身近に「重症急性呼吸器症候群」(SARS)と疑わしい患者がいたら、どうやって病院に運びますか。
世界で猛威を振るうSARS上陸に備え、厚生労働省は7日、全国の自治体に行動計画を作成するよう指示し、各自治体も対応策をまとめつつある。だが、患者と最初に向き合うのは一般人で、その対応に統一基準などは示されていない。外国人客の多いテーマパークやホテルでは独自に準備する動きもあるが、対応策はバラバラだ。
「東京ディズニーランド・シー」を経営するオリエンタルランドは5日から、園内の救護室を1時間ごとに消毒したり、病人に対応する従業員にマスクの着用を義務付けるなどしている。
さらに詳しい話を聞くと、「えっ!」と首をかしげたくなるような答えが返ってきた。
SARSと疑わしい者を病院に運ぶ場合、マスクをした従業員が付き添い、車かタクシーを使うというのだが、その際、「窓を開けて運ぶように決めています」(広報)。確かに、窓を開放した方が二次感染の危険は減るだろうが、ウイルスを外に撒き散らすことにならないのか。
この点について、東京消防庁は「それがいいのか悪いのか、こちらでは答えられない。東京都に聞いてほしい」。救急車の窓は開かず、隊員は感染防護効果のある服を着ているほか、SARS対策として「さらに効果の高い防護服を増やすこと検討中」という。
◇感染者を完全密閉
一方、東京都は一般病院から陰圧病室を備えた特定病院へと患者を搬送するため、感染者を完全密閉できる特殊な担架や救急車を保有。ただし、こうした担架などは病院間で使われるもの。
一般人が患者を車で運ぶ場合、窓を開けるべきかと尋ねても、「望ましいとは思えない」(担当者)と歯切れが悪い。
厚労省の結核感染症課の見解はどうか。
「100%空気感染しないとはいえないので、患者は救急車で運ぶ方がいい。テーマパークなども患者が出たら、保健所に連絡し、指示を受けてほしい」
プロに任せるのは当然ながら、こうした素朴な疑問にさえ、明確な基準がない。
医師でもある山野美容芸術大学の中原英臣教授は「厚労省は、疑わしい人が病院に行く場合、事前に連絡するよう指示している。だが、バスや地下鉄などに乗っていいのか、まで指示していない。私は119番連絡し、救急車を使うべきと思う。こうしたことは、早く統一した見解を出すべき」と指摘する。
省庁や自治体の対応が別れるのなら、民間の対応が統一されないのは当然で、ディズニーランド周辺の大規模ホテルの対応も千差万別だ。
外資系ホテルが「本部から指示が出ており、それに従っている」と話せば、別の老舗ホテルは「うちは外国人のお客さまが少ないので、特別な対策はしていません」。
中原教授は「日本の行政は縦割りで、省庁間で主導権争いをしたり、責任をなすりつけ合うばかり。だから、自治体や民間の対応もバラバラになる。これは危機管理の話で、国として省庁や自治体を包括した対策本部を作るべき」と嘆く。
現場の不安は募るばかりだ。
(伊藤猛)
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