−−SARS大パニック−−
〜見えない恐怖〜(5)
人が消える…
 21日、北京で新型肺炎の流行を防ぐため電車の車両の中を消毒する作業員ら(AP) |
◇中国式エステもガラガラ
新型コロナウイルスが犯人と断定され、「SARSウイルス」と命名された重症急性呼吸器症候群(SARS)。だが、感染経路や治療法は依然、不明のままで、最高の対策は、危険な人や場所に「近づかないこと」(国立感染症研究所)という。日本上陸も不可避とされるなか、不特定多数の人間が出入りする“密室空間”に、SARSの恐怖が忍び寄る。
「最近、常連が来ることが少ないね。かなり厳しいよ」−。東京・池袋にある中国式エステ店の中国人の男性スタッフが嘆く。
同店では、中国出身の女性らが働き、“密室”でマッサージなどを行っているが、世界的にSARS禍が拡大するにつれ、客足が鈍り始めた。
店員は「お客さんに聞いたわけではないので理由は分からない」と話しているが、確かに、この時期、中国娘と密室にいたくはないだろう。
不法就労者も少なくない業界だけに、「感染者が出ても絶対に表ざたにしないだろうし、消毒など対策もするかどうか…」(業界事情通)。
◇ホテルではアルコールで消毒
“密室”といえば、香港の地下鉄や映画館などはガラガラとなったが、日本のドーム球場などの密室空間では対策が練られているのか。
東京、大阪、名古屋、福岡、札幌と5つのドーム球場に問い合わせたが、いずれも「今は特別な対応はしていません」。営団地下鉄も「特別なことはしていません」。
全国でシネマコンプレックスを運営するワーナー・マイカルも「実際に感染者が出れば、対応はしなくてはいけないでしょう。ただ、原因や対応策が判明しておらず、なにが適切な対応なのかも分かりませんから」(広報)と戸惑うばかり。
ただ、東京ドームでは隣接するホテルが「通常の客室掃除に加え、今はドアノブや便座、電話など、お客さまが触れる可能性が高いものをアルコール液で消毒しています。エレベーターのボタンなども定期的に消毒しています」と、念入りな対応を始めている。
◇感染者を病院に封じ込めれば蔓延防げる
だが、こうした施設は少数派のようで、山野美容芸術大教授の中原英臣医師は「日本の都市部で香港のように病気が蔓延したら、スポーツの国際試合をしようにも相手が来てくれないでしょう。プロ野球にいる外国人選手や家族が帰国してもおかしくない。ドーム球場などのイベントは軒並み中止や自粛となり、誰も映画館に行きたいとも思わないでしょう」と最悪の事態を想定する。
ただ、中原教授はSARSで複数の死者がでたカナダのトロントで、松井秀喜選手のメジャーデビュー戦が無事に行われた例を挙げ、「なぜ、あの試合ができたかといえば、感染者を病院に封じ込めることができたからです」と分析。
そのうえで、「香港のように蔓延してしまえば、ほとんど対応策はないと思う。だから、水際で防ぐか、たとえ入っても病院や限定された地域に封じ込めるための準備が不可欠。ベトナムも迅速で的確な対応で、うまく抑え込んだ。ただ、日本は政府が対策本部も作っていません」と憤る。
個人がエステ通いを控えたり、民間企業が局所的な対処をしても、その効果は薄そうなのだ。
(伊藤猛)
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