−−SARS大パニック−−
〜見えない恐怖〜(6)
どうする日本企業
 21日、北京空港で新型肺炎予防のマスクを着け、搭乗手続きを待つ乗客 |
◇中国出張もできない
中国南部や香港を中心に感染が広がる新型肺炎「SARSウイルス」。一帯には、安い人件費や巨大な中国市場をにらみ、多数の日本企業が進出している。広東省に展開する日本企業は約1500社。各社は対策を進めているが、北京の日系企業で感染者が出るなど広がりも懸念される。先の見通しが立たない中、募るのは不安ばかりだ。
「影響については何とも…。ただ長引けば、ないとはいえない」とは、広東省・広州に乗用車やオートバイの生産工場を構えるホンダ関係者。
7月から小型車「フィットサルーン」生産、来春の生産能力倍増−などの計画を持ち、生産ライン増強を急ピッチで進めている。支援のため、日本から約100人が出張しているが、「4日以降、広東省、香港への出張を禁止し、20人が取りやめた」(同社)。
関連会社を含め工場の従業員は約6600人。1人でも感染者が出れば大きなダメージとなるため、「手洗いやうがいに加え、人が集まる場所には極力行かないよう指導している」(同社)。加えて、「現地判断で予防用の漢方薬を配ったり、部屋の一角に消毒作用があるとされる『酢』の入った容器を置いている」と、入念な対応を取っているようだ。
やはり、広州、香港に工場や販売拠点を持つ三洋電機。同社は3日以降、2地域への出張を禁止。8日には、現地からの要請を受け、「医療用マスク300枚、うがい薬1500本」(関係者)を緊急送付した。感染の広がりを受け、北京の現地法人にも同様の支援物資を送ったという。
広東省や香港への出張は、ソニー、三菱電機、ヤマハ、松下電器産業、トヨタ自動車など日本を代表する企業も軒並み禁止か延期にした。中国の他地域や東南アジアについても「自粛」する動きが広がっている。
期間は「外務省の対応を見て判断」(みずほコーポレート銀)とするところが大半。収束のメドが見えないなか、「いつまで禁止すればいいのか…」(あるメーカー)という苛立ちの声も聞こえてくる。
◇駐在員にも日増しにストレス
今のところ、有効な治療法はなく、各社は駐在員の家族の一時帰国や、マスクを送るなどの予防対策に力を入れる。
三越は現地法人・香港三越に、医療用マスク4000枚を送付。買い物客など不特定多数の出入りがあるため、従業員がマスク着用で接客をしているほか、「頻繁にフロアを消毒している」。
みずほコーポレート銀は、1000枚強のマスクを送ったほか、「感染が出た際の拡大を抑える」ため、勤務場所や勤務時間を分離。香港、上海に事務所を持つ高島屋もマスクやうがい薬を送ったほか、「通勤ラッシュを避けるため、勤務時間を短縮している」。
こうしたなか、北京のNTTデータ現地法人で7日、中国人の女性社員が感染する騒ぎがあった。同じビルに松下電器の関連会社も入居していたが、両社とも「広がりは見られない」と、1週間の営業停止後、業務を再開した。
「終わりが見えないのは不安。現地の駐在員にも日増しにストレスがたまっている」とは、大手電器メーカー関係者。
ウイルスという「見えない敵」が相手だけに、手探りの“神経戦”が続いている。
(竹岡伸晃)
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