「XJAPAN」のヴォーカリスト、Toshlが先月、マインドコントロールの実態をつづった『洗脳 地獄の12年からの生還』(講談社)を出版した。Toshlの洗脳騒動は記憶にある人も多いだろうが、その内容は想像を絶する悲惨さだ。元妻に裏切られ、精神と肉体を支配されてボロボロになったトップアーティスト。決別から5年経ち、ようやく日常を取り戻している。
1989年、24歳のときに「XJAPAN」としてデビューし世界進出も果たしたが、97年に自ら脱退。その背景には自己啓発セミナー「ホームオブハート」の主催者、MASAYAのマインドコントロールがあったという。
なぜ、洗脳に陥ってしまったのか。「家族、友人、XJAPANのトラブルが重なり、心が病んだ状態だった。多額のお金をめぐり、母や兄の変貌や友人の裏切りを目の当たりにして、不信感でいっぱいだった」
そんなとき、元妻と出会い、MASAYAのセミナーに参加する。家族や周囲へのうらみを爆発させ、それまでの自分は「エゴの化け物だ」として決別させる。恐怖の中にも高揚感が芽生えた。
次第にエスカレートし、セミナーの趣旨に少しでも反発した様子を見せると、「化け物アゴ男」「宇宙的犯罪者」と罵倒され、元妻から殴る蹴るの暴行を受ける。そして待っていたのは、執拗な搾取だった。
支配したのは、「MASAYAのような自我が薄い人が使うお金は美しく、そのほかは醜い」という身勝手な理論。カネ集めを命じられ、消費者金融を駆け回った姿は、ライブで数万人を熱狂させるアーティストのものとは信じがたい。