【日本の解き方】国王が来日したサウジの現状 投資増や技術協力で関係維持、日本は中東外交にも踏み込む
サウジアラビアのサルマン国王が来日した。国王が日本を訪れるのは46年ぶりだ。
サウジアラビアは、産油国として名前こそ日本に知られているが、その実態はあまり知られていない。サウード王家による絶対君主制の国である。成文憲法もあるが、その第1条で、イスラム教の聖典であるコーラン(クルアーン)を憲法とすることが明記され、イスラムの教義が国の根幹になっている。政教分離ではなく、政教一致の国である。
行政機構も日本などと異なっており、かつては内閣も議会もなかった。そのため、法律もなく、イスラム法に則り、「勅令」が施行されてきた。最近では、内閣に相当する閣僚評議会や国会に相当する諮問評議会、そして地方議会も設置された。もっとも、首相格の閣僚評議会議長は国王の兼任である。
2015年12月に行われた地方選挙で、女性に初めて選挙権と被選挙権が認められたことが話題になった。お世辞にも、人権が確保されているとはいいがたいが、中東で有数な親米国家であることもあり、人権侵害への国際的な批判にはそれほどさらされていない。
そのサウジアラビアにとって今回の国王訪日の狙いは、両国の経済にとって良好な関係を保つことだ。
前回のサウジアラビア国王の訪日は1971年で、73年と79年の石油危機の前のことだ。2度に渡る石油危機により、産油国の筆頭であるサウジアラビアの国際社会での発言力は格段に大きくなった。一方、石油の大量輸入国である日本の立場は弱くなった。石油危機後に、いくらお願いしても国王来日はあり得なかっただろう。
ところが、最近では、エネルギーも石油一辺倒でなくなり、石油価格も低迷している。このためサウジアラビア経済も苦しくなっている。
こうした原油市場の変化も、今回の国王訪日の背景にある。サウジアラビアと日本は経済構造が全く異なっており、補完関係にあるので、経済協力の点で一致できる分野が大きい。特に、サウジアラビアでは石油生産に依存しない「脱石油」に向けた経済改革が重要である。このため、サウジアラビアは日本からの投資や技術協力を受けたいし、日本としても親米国家なのでリスクが比較的少ないことから、投資増を図りたいところだ。
具体的には、日本とサウジアラビアは「日・サウジ・ビジョン2030」を取り交わした。それによれば、サウジアラビアが成長を目指す9つの分野について日本が投資や技術協力などを推進するとしている。
その一方で、日本は中東外交にも踏み込んでいる。日本の中東外交は「全ての国と仲良く」である。その観点でも、サウジアラビアとイランが1年以上にわたり国交を断絶していることは危惧すべきことであり、日本はサウジアラビア国王に両国の関係改善を促した。
これは、日本の対サウジアラビア投資のリスクを軽減する上でも必要なことである。 (元内閣参事官・嘉悦大教授、高橋洋一)
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