めまいがするようなくだらない事件が続いている。
新コロナ患者を受け入れている病院に、カッターナイフの刃が送りつけられたり、中傷ビラが貼られたりしたらしい。
さらには高齢者施設で介護を続ける女性の自宅に、「コロナをばらまくな」と書かれたビラが入れられたという。
おそらく、これらは氷山の一角で、日本中でこんなバカげたことが繰り返されているのかもしれない。
これらの事件に共通することは、その攻撃理由が、かなりピント外れであることだ。
政治家や有名人などが不用心なパーティーを開いたことに対する中傷ならば致し方ない部分もあるが、この前記の方々は、献身的な自己犠牲を払って、最前線でコロナ禍と戦っている「勇者」である。
ただでさえ数少ないコロナ感染患者受け入れの病院がなくなったら、一番困るのは私たち全員であり、愚かな「ブーメラン行為」だ。
高齢者施設で働いている方は、最も重症化しやすい方々のケアをしている。どう考えても普通の方の何倍もコロナ対策を強くしているはずだ。
また、自分たちの親が永遠に健康でいるとでも思っているのだろうか。高齢化問題は、ともすれば明日はわが身である。攻撃どころか、逆に感謝の念を抱かなくてはならない。
こういう愚行をする方たちは、あたかも自分たちは正しいと言わんばかりの勢いである。どこがどう混線したら、そんな理屈にたどり着くのかと、膝をつき合わせて直接に彼らと話してみたいくらいだ。
中傷文の雰囲気からしても、混乱した上でのストレス解消のようなものだと推測できるが、同時に小ズルい匂いもする。
彼らのようなタイプは、ルール無用の若者や強く出るような連中には、絶対にその“正義の刃”を向けようとはしない。絶対に強く反撃してこないようなポジションの方をきちんと見極めているから厄介である。
こうなると「自粛警察」「マスク警察」などはまだ理屈が通っているだけかわいいもので、ほとんど「イジメ」の領域である。
私は事件モノなどの映画やドラマに、犯人側の役として出演するときには、「盗人にも三分の理あり」を大事にする。
どんな犯罪であろうと、決して混乱した頭が引き起こした無差別な行為ではなく、そこには必ず本人なりの正義や理屈があるはずだと役作りをする。その生々しい人間性がなければ事件のあらましを、お客さまに深く理解してもらえないからだ。
だが、このような事件の犯人の役を演じるとしたら、どういう心を想像すればいいのであろう。ピント外れな中傷ビラを血眼になって書いている犯人の気持ちを役作りするのは難しい。
そんなドラマの犯人役にキャスティングされないことを祈るだけである。
■大鶴義丹(おおつる・ぎたん) 1968年4月24日生まれ、東京都出身。俳優、小説家、映画監督。88年、映画『首都高速トライアル』で俳優デビュー。90年には『スプラッシュ』で第14回すばる文学賞を受賞し小説家デビュー。主な出演番組は『アウト×デラックス』(フジテレビ系)など。YouTube公式チャンネル『大鶴義丹の他力本願』も随時更新中。映画『めぐみへの誓い』(2月19日公開予定)で拉致の実行犯役を演じる。