芸能

【大鶴義丹 それってOUTだぜ!】若い世代はドラマや映画を「倍速視聴」 仲間との会話についていくための時間節約術

若い世代から聞いた話で、最近一番驚いたことは「倍速視聴」であった。いわく、最近の10代は、テレビで放送されたドラマや映画、バラエティー番組などを録画しては、CMを飛ばしてさらに「倍速再生」をするという。

その理由は、時間の節約だ。仲間との会話についていくためには、多大かつ多岐にわたる情報を持ち合わせる必要があるらしく、そのためには普通の速度では時間が足りないのだ。

私も、ニュースなどは「倍速再生」でもいいと思うことはあるが、ドラマや映画を倍速で「キュルキュル」と高音な音を伴って視聴する気にはなれない。

当たり前であるが、映画やドラマにおいて、監督や役者が渾身(こんしん)で込めた「間」や「感情」などが台無しになるのは分かり切ったこと。唯一得られるのは、こんなストーリーの作品でしたという「コンテンツ概要」だけであろう。

その「間」や「感情」の調理で商売をしている側としては、新世代感覚の台頭に恐ろしいやら、腹立たしいやらで震えるばかりである。だが、それを「最近のナンチャラ」で済ましてしまっては老害への第一歩だ。

不思議なことに、その逆のデータもある。昨今の若者が「倍速再生」で情報をインプットするという話と同時に、昨今では、コンサートや演劇といったさまざまなイベントなどの「実演」興行における観客動員数が高い数字を出している。

ここ1年はコロナ禍の座席制限があるが、逆にその制限がチケットの入手を困難にしているケースも多々あるという。

つまり若い世代はコンテンツをバカにしているのではないようだ。

私たちの時代とは違い、今の時代はコンテンツの洪水である。私自身もNetflixで全100話ほどの「女性CIA捜査官モノ」の巨大ドラマにハマっていて、仕事や別の趣味の合間に追いかけるように見ているが、時間が足りなくて困っている。

若者は、私自身の状況がさらに悪化したあげくのような「倍速視聴」なのであろう。

だが、それでも会場へ出向く時間と、現地で時間を拘束されることを分かっていながら、意味があると認めた「実演」の興行には足を運ぶのだ。

忙しい中でも、価値に対して対価を払うということをシッカリと理解している。

価値を認められないコンテンツゆえに「倍速再生」されてしまうという見方もある。ある意味で自然淘汰(とうた)だ。

私たちが若者であった時代、実質的にテレビが唯一の選択肢であった。ある程度のコンテンツを放送すれば商売が成立した。なかにはいい加減なコンテンツもあったはずである。

それでも、テレビは大衆を画面の前に強制させる超絶なパワーを持っていた。ゆえにコマーシャルで巨大ビジネスが成立もした。

だが時代は変わり、わが家でもテレビ画面で見るのは民放だけではなく、YouTube、Netflix、Hulu、ABEMAと、同一時間にほぼ無限の選択肢がある。

そろそろ私も「倍速再生」をするかもしれない。超絶パワーは「荒城の月」か。

■大鶴義丹(おおつる・ぎたん) 1968年4月24日生まれ、東京都出身。俳優、小説家、映画監督。88年、映画『首都高速トライアル』で俳優デビュー。90年には『スプラッシュ』で第14回すばる文学賞を受賞し小説家デビュー。4月6日発売の『すばる』で連載小説『女優』がスタート。4月10~18日に東京・日本青年館ホール、5月2~5日に大阪・COOL JAPANPARK OSAKA WWホールで上演される舞台『BACK TO THE MEMORIES』に出演。公開中の映画『めぐみへの誓い』で拉致の実行犯役を演じている。YouTube公式チャンネル『大鶴義丹の他力本願』も更新中。

©2025 SANKEI DIGITAL Inc. All rights reserved.