指導者や体制側は、小学校の先生から、果ては独裁者まで可能な限り「衆」をコントロールしたがるものだ。それは自分の無能さが露呈して、反逆者が増えるのが怖いからだ。
芝居の演出でも同じであるが、自分の無能さを隠したい演出家や監督にかぎって、「威光」を示したがる。逆に自分の作りたい世界がハッキリしている優秀な方は、驚くほどに穏やかである。
私たち俳優に対して、ひとつひとつ細かいことを要求するが、それは奴隷扱いではなく、「精密機器」を扱うがごとくに丁寧である。
これは冷静に考えると当たり前のことで、高度な機械を組み立てる作業において、それぞれのパーツをぞんざいにほうり投げたり、雨ざらしにしたりするような作り方で、高度なマシンがまともに完成するはずがない。
だが弱肉強食のエンターテインメントの世界なら仕方がないが、すべての学校教師に対して高度なパフォーマンスを要求するのは現実的ではない。また、まったく家庭教育を放棄している親と愚息もいるはずだ。世の中は難しい。
ちなみに私が卒業した当時の和光大学付属高校の「和光学園」は、髪形や髪の色、化粧、服装から持ち物、アクセサリーまで生徒たちの個人的な「いでたち」はすべて自由であった。
しかしその半面、試験点数に対する判断は厳しく、茶髪でも黒髪でも、点数が1点でも足りないと、平気で留年になっていた。だから1クラスに3人くらいは上の学年から落ちてきた者がいた。
私はその中にいて、髪の色なんてものは、現実社会の厳しさの前では何の関係もないとすぐに理解した。それを気づかせるのが高度な教育である。
■大鶴義丹(おおつる・ぎたん) 1968年4月24日生まれ、東京都出身。俳優、小説家、映画監督。88年、映画『首都高速トライアル』で俳優デビュー。90年には『スプラッシュ』で第14回すばる文学賞を受賞し小説家デビュー。発売中の『すばる』で連載小説『女優』がスタート。舞台『BACK TO THE MEMORIES』が東京・日本青年館ホールで上演中(18日まで)。5月2~5日には大阪・COOL JAPANPARK OSAKA WWホールで上演。公開中の映画『めぐみへの誓い』で拉致の実行犯役を演じている。YouTube公式チャンネル『大鶴義丹の他力本願』も更新中。
