私自身は、そのドキュメンタリーが主張する真相を手放しで受け入れるわけではないが、その番組が全身全霊でこの「疑惑」に対して立ち向かっているということだけは理解した。
そして、その生々しさに、「もしかしたら…」という気持ちになった。
林死刑囚の冤罪の可能性は、この番組シリーズだけでなく、ここ数年、他のマスメディアなどでも真剣に語られている。大勢の被害者もいる事件なので、軽々しく冤罪説を語ることは避けるが、どのリポートを読んでも検察の捜査のずさんさが「浮かび上がる」ことばかりである。
過去においても、巨大な冤罪が明らかになったことは枚挙にいとまがない。実際に死刑判決確定後事件が再審によって無罪になったことも多々。
つまり警察も検察もそういうことをする「前科者」なのだ。彼らが「前科者」をまず疑うのと同じように、私も彼らを信用できない。
もし仮に、この事件が冤罪となって、林死刑囚が釈放されたとしたら、警察と検察は解体に値するのは言うまでもないだろう。
だがそれ以上に、あのときにメディアスクラムを組んで家の周りを取り囲んだ、ワイドショーや週刊誌、新聞の記者たちは断罪されるのか。
また連日のワイドショーをにぎわした、「ホースでの水合戦」を見て嘲笑していた私自身も、罰を受けなくてはならない。無数の「せせら笑い」も万死に値する。
■大鶴義丹(おおつる・ぎたん) 1968年4月24日生まれ、東京都出身。俳優、小説家、映画監督。88年、映画『首都高速トライアル』で俳優デビュー。90年には『スプラッシュ』で第14回すばる文学賞を受賞し小説家デビュー。『すばる』で小説『女優』を連載中(全3回)。公開中の映画『めぐみへの誓い』で拉致の実行犯役を演じている。YouTube公式チャンネル『大鶴義丹の他力本願』も更新中。
