だが、店主はその「水冷式」に、とある改造を施し、さらに瓶ビールのうま味を引き出しているという。
凍る寸前まで冷やされた小さめのコップに、ソムリエのごとく丁寧にビールを注ぐ。私は泡少なめが好きなので、その調整を他人には任せられない。だから普段から瓶ビールを注いでもらうことはしない。
久しぶりの「水冷式」の瓶ビールを一気に流し込む。うますぎて意味不明のうなり声を上げてしまった。
同様に店内のあちこちから「ヴッー」とか「アー」と聞こえてくる。皆思いは同じなのだろう。
菅義偉首相は下戸だという噂もある。確かに酒がなくても人間は死なない。また人生を振り返っても、大酒飲みよりも下戸が優秀な人生を歩んでいる気もする。“百薬の長”というのは大嘘で、逆に平均寿命は延びるであろう。
だが、今回の宣言下における酒類提供禁止という私権制限は、酒飲みの逆恨み以上に、私たちの心に多く「禍根」を残した。
酒うんぬんの次元を超えて、ほとんどの方が普段は意識することもない、「国家」の実像を見る結果となった。
酒1杯を飲ませないように、貯金が封鎖されたり、土地が没収されたり、戦争に駆り出されたりすることもあるのだろう。
■大鶴義丹(おおつる・ぎたん) 1968年4月24日生まれ、東京都出身。俳優、小説家、映画監督。88年、映画『首都高速トライアル』で俳優デビュー。90年には『スプラッシュ』で第14回すばる文学賞を受賞し小説家デビュー。YouTube公式チャンネル『大鶴義丹の他力本願』も更新中。舞台『BACK TO THE MEMORIES』が22~25日、大阪・COOL JAPANPARK OSAKA WWホールで上演。
