ワイドショーなどで、手厳しいコメントなどで人気を博している、アンミカさんの夫に、助成金の不正受給疑惑が報じられた。この疑惑報道には、私も10センチくらい飛び上がって驚いた。
アンミカさんの夫、実業家セオドール・ミラー氏が経営する会社が、新型コロナウイルスの「雇用調整助成金」を不正に受給しているという疑惑を「文春オンライン」が報じた。社員の休業日数を水増ししたという疑いが浮上しているのだ。
この疑惑の真実は、今の時点では不明で、あくまでもアンミカさんの夫個人の行為に対する疑惑である。なので、彼女個人への直接的な批判などは意味がないと思う。
だが、他のタレントの旦那の疑惑ならいざ知らず、苦労して立身出世し、厳しい「正論」が売りである、今のアンミカさんにとっては相当に厄介な話である。
アンミカさん自身、出演する番組で、この疑惑について、事実ならば「あってはならないこと」とした上で、「疑惑を払拭すべく、きちんと調査、訂正していただきたいと思っています」と口を開いた。
それにしても、彼女は少し前に経産省キャリア官僚2人の給付金詐欺事件について、テレビ番組で「バカタレ」呼ばわりしている。まさに巨大な「正論」ブーメランが、自分の頭上に戻ってきたという感じだ。
昨今の「正論」の流行についてだが、いつはやり出したかは分からないが、タレントやお笑い芸人さんがワイドショーなどで「正論」を語るのが当たり前となり、今やそれがひとつの商業モデルとなっている。SNS時代とも相性がいいのだろう。
だが、それらには大きなリスクがある。法の番人の犯罪が最も大罪であるのと同じように、マスメディアにおける「正論」には、とても大きな発言責任が伴う。
それも、今やインターネットにすべての事象が残される時代であり、その責任は一生レベルで継続するものだ。
また今回のアンミカさんの夫の疑惑のように、その責任は近親者にまで強く作用する。「正論」とは、そこまで大きなリスクを覚悟する商売なのだ。私には絶対に無理だ。
不良自慢がカッコいいなどと、時代錯誤なことをいうわけではない。今やコンプライアンスの観念から、ポリコレや差別などは厳禁で、そういうことを厳しく排除していくのはマスメディアの命題でもある。メディアに出る者は、誰よりも自分自身を律する必要がある。それらは大前提だ。だが、聖人君子の集まりというのも味気ない。
それらを十分よく理解しての話であるが、故・横山やすしさんや若いころのビートたけしさんの毒ガスギャグにキラメキを感じた世代にとっては、どうもイマドキの「正論」商業モデルが肌に合わない。
皆さん頭のキレがいいので見事な「技」を披露しているが、それがタレントやお笑い芸人さんの「本懐」なのかしらと、少しだけ寂しい気持ちになる。
今は亡き、有名な舞台俳優の先輩に言われた言葉がある。
「役者なんて者は×××なんだよ」
彼はマスメディアでは使うことができない古い「用語」で、役者の在り方を表現していた。
今の時代、彼の言ったことがすべて正しいとは思わない。だが役者が無駄に金を持つと、純真に芝居をする心を失うのは本当のことである。
■大鶴義丹(おおつる・ぎたん) 1968年4月24日生まれ、東京都出身。俳優、小説家、映画監督。88年、映画『首都高速トライアル』で俳優デビュー。90年には『スプラッシュ』で第14回すばる文学賞を受賞し小説家デビュー。YouTube公式チャンネル『大鶴義丹の他力本願』も更新中。