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【大鶴義丹 それってOUTだぜ!】唯一合わない妻との価値観 「何にでもお酢」…結婚10年でやりたい放題に

他人さまの夫婦トラブル話を聞いていると、自分たち夫婦は、いろいろな部分で価値観が一致するほうだと思う。

そもそも、わが家のような子供のいない中年夫婦間で、大筋の価値観が合わないというのは致命的だ。やはり「子はカスガイ」というのは本当だ。「カスガイ」がない構造の建物は、ちょっとした地震でも倒壊する。夫婦も、恋愛モードが消滅した途端に瓦解(がかい)するであろう。

私と妻の趣味趣向はまったくズレている。例えば、私が大好きな「ホラー」や「アウトドア」が妻は大嫌いだ。そういう遊びの時間を共有することはほぼない。

だが、経済観念や衣食住に関わることにおいて、大きく意見が異なることはない。育った環境や地域性など、「基礎」の部分が似ているのかもしれない。

だが私が唯一、妻の行動でのみ込めないのは、「無類のお酢好き」ということだ。お酢が健康に良いのは分かっているが、居酒屋や町中華などに行くと、妻は何にでもお酢をかけてしまう。結婚した当初はそれを微妙に隠していたのだが、結婚生活10年にもなると、いよいよやりたい放題である。

私は無類の料理が好きということもあり、それを作った料理人がどういう過程を経て、その味にたどり着いたのだろうということを考える。それが高級店ではなく、量とコスパが最優先の、撮影スタジオの食堂などでも同じだ。

そういう食堂などでは好きに「味変」してくださいと言わんばかりに、テーブルの上に、しょう油、お酢、タバスコ、辛子、マヨネーズが並んでいる。

しかし私は、まずはそのままの味を食するようにしている。たとえ味付けに不満があっても、料理の上からマヨネーズをドボドボかけるようなことはしない。

値段に関係なく、すべての料理において、何かしらの「答え」を信じて味を作った料理人がいる。例え、その「答え」が自分の趣向とは違っていても、それを変えてはいけないというマイルールだ。

だから、妻が居酒屋で唐揚げや焼き魚にお酢をかけたり、町中華で野菜炒めにお酢をかけたりすることが許せない。そんなことをしたら、料理人が、揚げ加減や焼き加減に込めたメッセージが消し飛んでしまう。いうまでもなく、自分が考え抜いて作った料理にお酢をかけるのはお断りしている。それが嫌ならば、妻自身が、「酸味」をコンセプトとした料理を作ればいい。

若い時分に、とあるベテラン監督に怒られた経験がある。ドラマの演技に少しだけ慣れが出た私は、台本に書かれたせりふの語尾を言いやすいように変えたのだ。

「セリフを自分なりに変える癖はダメ。例え二流の脚本家であっても、彼らなりに、一字一句に、心血を注いでいるせりふのはずだ」

私はそれ以来、意図的にセリフの語尾などを変えることはやめた。もしかすると、変えたほうがいい結果になることもあるだろう。だが、結果よりも大事なこともあるような気がしたからだ。

■大鶴義丹(おおつる・ぎたん) 1968年4月24日生まれ、東京都出身。俳優、小説家、映画監督。88年、映画『首都高速トライアル』で俳優デビュー。90年には『スプラッシュ』で第14回すばる文学賞を受賞し小説家デビュー。YouTube公式チャンネル『大鶴義丹の他力本願』も更新中。

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