「近代経済学の父」と言うべき、ジョン・メイナード・ケインズが生きていたら、「これぞ完全雇用だ」と叫んだかもしれない。しかし、「共産主義の父」、カール・マルクスが生きていたら、「これぞ打倒すべき悪徳資本家の国だ」と指弾したに違いない。どちらも韓国のことだ。
韓国政府の発表によると、2021年9月の失業率は2・7%だった。就業者数は2768万3000人で、前年同月より67万1000人も増加した。新型コロナウイルスが猛威を振るうなかでの数字だ。
ケインズは「奇跡だ」と叫んだ後で、別の資料を見て「この国はどうなっているのだ」と怒るのではないだろうか。
別の資料はたくさんある。雇用部門だけ見ても、こんな具合だ。
「20年の30~40歳代の雇用率は経済協力開発機構(OECD)加盟38カ国のうち30位」
「4年制大学の3、4年生と無職の卒業者にアンケートしたところ65・3%が、就職先の門が狭すぎるとして、すでに就職を断念し、求職活動をしていなかった」
「公務員試験への応募準備者は8月段階で87万人に達した。韓国では、公務員試験の準備者は統計上、『失業』に含めないことになっている」
「中央銀行の調査によると、長期求職者(失業期間が4カ月以上)がこの1年ほどで26%増えた」
「青年層の体感失業率は20%レベルとされている」
一方、マルクスは、大韓航空(KAL)のオーナーに関する情報を見ただけで、「やはり、この国にはマルクス主義革命が不可避だ」と大喜びするだろう。
KALといえば、あの「ナッツ姫」がいた航空会社だ。今はナッツ姫(趙顕娥=チョ・ヒョンア)の弟である趙源泰(チョ・ウォンテ)氏が、KAL代表取締役と、KALを含む韓進財閥全体の持ち株会社の会長を兼ねている。ナッツ姫は姉弟ケンカで敗れて、目下は浪人中だ。
この趙源泰氏がすごい。コロナによる経営危機のなかで、20年の社員年報を前年より平均16%切り下げた。
その一方で、自分の年俸を13億7835万ウォン(約1億3267万円)から、17億3241万ウォン(約1億6675万円)と25・7%引き上げた。念のため、彼は持ち株会社の会長として別途の年俸13億6600万ウォン(約1億3148万円)があり、株の配当金はまた別だ。
マルクスは、最大財閥であるサムスンの実質経営者である李在鎔(イ・ジェヨン)氏が麻薬に類する薬物注射の常習者であったことにも言及し、「悪徳資本家の追放、階級間の貧富の格差解消」を叫ぶだろう。
しかし、彼も「現在の文在寅(ムン・ジェイン)政権は『反財閥』の左翼政権だ」と聞かされたら、目を丸くするだろう。そして、文政権下で貧富の格差が拡大し、公務員や大手企業の社員(労組員)が金持ち階層に属し、左翼政権の熱烈支持者であることを知ったら、気絶するに違いない。
■室谷克実(むろたに・かつみ) 1949年、東京都生まれ。慶応大学法学部卒。時事通信入社、政治部記者、ソウル特派員、「時事解説」編集長、外交知識普及会常務理事などを経て、評論活動に。主な著書に『悪韓論』(新潮新書)、『反日種族の常識』(飛鳥新社)、『呆韓論』(産経新聞出版)、『韓国のデマ戦法』(同)など多数。