定年後の居場所

現役シニアに自分主体のススメ マザーテレサ「神様は成功より挑戦を望む」1/1ページ

少し前の朝日新聞の読者欄の「声」に「70歳も現役社会をどう思いますか?」というテーマで、65歳から80代までの6人の意見がとりあげられていた。記事の中では私の談話も紹介されていて、「これをしている時、俺は俺でいられる」という自分なりの居場所を持つことが大切だと述べている。それぞれの投稿内容を読んでみると「現役」「定年」へのとらえ方は人それぞれだと感じた。

定年まで3年を残して退職した中学校教員(65)は、自由で気ままな生活も半年を過ぎると、自分が空っぽになった気がして週3日短時間働くことにした。その後、外国語の科目履修生として大学に2年通い、昨年から日本語指導員として外国の子供たちの学習支援をしているそうだ。定年後もまだまだ現役である姿が目に浮かぶ。

また、70代後半から100歳超えの方々と向き合う介護福祉士の女性(70)は、将来の自分の姿を重ね合わせつつ寄り添っている。年金以外の収入で、孫への贈り物、本の購入。好きなサッカーチームへの応援にも出かけられることに満足している。仕事にもプライベートにも充実した姿がうかがえる。

62歳で郵便局を退職。妻を看取った後に、駅前でたばこの吸い殻を拾うパートの仕事に携わって10年の男性(86)は「雨にも負けず風にも負けず」の心意気で風邪もひかず健康だそうだ。80代後半になっても現役の感じが伝わってくる。これらの声に耳を傾けていると何かしらこちらも元気をもらうことができる。

翌週には同じテーマで、30~50代の働き盛りから寄せられた投稿を紹介していた。34歳の鍼灸師の男性は「70歳を超えても働けるかと問われても、正直なところ分からない。10年後の未来も予想がつかないのに、30年以上も先のことなど、分かるはずもない」。若い人にとってはこの辺りが本音なのだろう。

ただ働き盛りの人たちは、自分の親や身の回りにいる先輩たちの姿をよく見ている。71歳の父親は定年後に学童保育の指導員として経験を積み、通信教育で保育士資格を取得した。また、ある後期高齢者の両親はともに朝の新聞配達をしていて、集金も担当している母は「お客さんと話をすると、自分も相手も元気になるような気がする」と楽しみながら働いている様子だという。

年配の人の意見には、年金の減少や医療費の増加を指摘して国の貧しすぎる政策に対して怒っている人や、シニアの力を使わないのは社会の損失だといった意見もあった。確かにそう感じるのも無理はないが、もっと自分主体で考えてもよいのではないかと感じた。

この記事を読みながら、マザーテレサが、「世界平和のために何をしたらいいのか?」と聞かれて、「家に帰って家族を大切にしてあげて下さい」と答えたことを思い出した。また「神様は私たちに、成功してほしいなんて思っていません。ただ、挑戦することを望んでいるだけよ」とも述べている。

■楠木新(くすのき・あらた) 1979年、京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。50歳から勤務と並行して取材、執筆に取り組む。2015年3月、定年退職。現在、神戸松蔭女子学院大学教授。人事・キャリアコンサルタント。25万部を超えるベストセラーになった『定年後』(中公新書)など著書多数。21年5月に『定年後の居場所』(朝日新書)を出版。

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