勝負師たちの系譜

“現役最年少の新人王” 将来はタイトル狙える伊藤匠四段1/1ページ

伊藤四段
伊藤四段

 新人王戦はしんぶん赤旗の主催で、若手棋士のみ(女流・奨励会員含む)による棋戦である。始まったのは1970年。若手の登竜門と言える棋戦だ。

 最初は若手棋士が少なかったせいか、中堅棋士も出場していた。

 第1期の決勝戦は、山口英夫五段対橋本三治五段(共に当時)で、山口が優勝。橋本は当時45歳だった。

 第5期は新四段の私が吉田利勝六段(当時41歳)と決勝を戦って優勝したが、三番勝負の第1局は深夜に持将棋成立、指し直して勝ったのが、午前3時過ぎだったという思い出がある。

 新人王戦の優勝者には、羽生善治九段、森内俊之九段、丸山忠久九段ら、名人経験者が並び、森内と藤井猛九段は3回ずつ優勝している。

 つまり新人王戦の優勝は、今後トップ棋士になる可能性があると認定されるようなものと言える。

 新人王戦も半世紀を過ぎ、今年は第52期。決勝に進出したのは、昨年10月の同時期に四段になった、伊藤匠四段(19)と古賀悠聖四段(20)の2人だ。

 伊藤は宮田利男八段門下で、同門の本田奎五段、斎藤明日斗四段と同じ、東京・三軒茶屋にある宮田道場で育った三羽烏の一人。本田は棋士1年目で棋王戦の挑戦者になったから、伊藤にはかなり刺激になったことだろう。

 対する古賀は中田功八段門下で、師匠と同じ福岡市の出身。彼は三段リーグを次点2回でフリークラス入りし、既定の成績を取って、C級2組入り(順位戦は来年から)した苦労人だ。

 三番勝負の第1局は、先手番となった伊藤が相掛かりに誘導し、相手の右玉を見て、角を取らせる駒損でも玉に一気に迫る強攻で、勝利した。

 続く第2局も、勢いに乗った伊藤は矢倉模様から一転、急戦の構えを取り、飛角を自在に捌いて敵陣に殺到し、快勝。2連勝で優勝となった。後輩ができた現在も、未だに最年少棋士である。

 伊藤は棋士になってまだ1年ちょっとだが、通算勝率が7割6分を超えている(28日現在)。まだ初期の段階だが、7割超えからスタートできる棋士はそう多くない。今までの例からも、タイトルまで届く可能性は大いにある。

 特に新人王戦の優勝者だけに、ファンの方には注目して見てほしい棋士の仲間入りをした、と言って良いだろう。

 ■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

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