サクラと星条旗

大谷翔平よ、君の居場所はエンゼルスではない すでに「ナイスガイ」選手の仲間入り 夢のワールドシリーズV実現できる球団へ1/1ページ

MLBのファンと選手に2021年シーズンで最も好感の持てる選手を投票させたら、勝者は「ベースボール・ダイジェスト」誌の2021年MVPにも選ばれた大谷翔平しかいないだろう。

選手、コーチ、リポーターに聞いて回れば、ほぼ誰もが大谷の名を挙げるに違いない。彼の太陽のような性格が人を惹きつける。明るくフレンドリーで笑顔を絶やさず、文句を言うのは聞いたことがない。気前もいい。オールスター戦のHRダービーの賞金をスタッフに贈呈したことは有名だ。

彼は多くのMLBスター選手が侵されるエゴイズムという病とは無縁らしい。割れたバットを拾い、自分のバッティンググローブでベースを払う。小児病棟にも喜んで訪問する。大谷に打ち取られたデトロイト・タイガーズのミゲル・カブレラ一塁手がお返しに彼の股間をつついた時も、笑って流した。根っからの野球ファンであるカリフォルニアの隣人が言うには、多くの点で大谷はできすぎ、なのである。

大谷はすでに「ナイスガイ」として知られる歴代MLB選手たちの仲間入りをしている。元ヤンキースの殿堂入り選手で今はマーリンズCEOのデレク・ジーター氏もその一人だ。彼は礼儀正しさの見本のような人で、恵まれない若者向けのチャリティーや、薬物撲滅プログラムなどもやっている。彼を悪く言う人は見たことがない。

最近まで大谷のチームメートだったアルバート・プホルス選手もそうだ。通算679本塁打で殿堂入りが約束されている選手で、球界で最もフレンドリーな男と言われている。若者のための活動と教育機会の提供、特にダウン症児の家族支援に力を入れている非営利団体「プホルス・ファミリー基金」を運営している。

松井秀喜氏の名を挙げる人もいるだろう。彼はインタビューやサインを断ったことがない。2011年東日本大震災の被害者救援のために5000万円を寄付したことは特に記憶に残る。2015年3月には松井氏と元同僚のジーター氏が東京ドームでチャリティーイベントを開催し、野球教室や松井対ジーターのHRダービーなどを行った。

そんな彼らと興味深い対照をなすのが、バリー・ボンズなど「ナイスじゃない」側の選手たち。

ボンズは通算762本塁打、シーズン最多本塁打の記録保持者で、勝利への貢献度の指標となる「WAR」はベーブ・ルースに次いで歴代2位。MLB史上、本塁打500本以上、500盗塁以上の記録を持つのは彼一人である。

しかし彼はサンフランシスコ・ジャイアンツのチームメートから激しく嫌われていた。一人だけ離れたプライベートロッカースペースを用意させるなど、特別待遇を要求する傲慢な態度のせいだ。

取材を拒否するので記者団からも嫌われていた。無愛想、冷淡、恩知らずで伝説的にエゴが強い、鼻持ちならない自慢屋、というのがもっぱらの評判だった。

ある時チームメートらがボンズに態度を改めるよう求め、多少友好的になった時期があった(この頃彼にインタビューした私がいうのだから間違いない。あの時は確かに愛想が良かった)。しかし打撃の成績が下がったため、元の不快な態度に戻したところ、不思議なことに成績はまた上昇したという。ボンズはステロイド使用者で、そのせいで彼を嫌う選手が多く、殿堂入りもしていない。

ボンズよりさらにひどいのは元ヤンキース、千葉ロッテでもプレーしたメル・ホールだ。12歳の少女を含む複数の少女に対する強制性交罪で禁錮45年を科され、テキサス刑務所に服役中である。

現役選手では、喧嘩早いルーグネッド・オドーア(ヤンキース)、態度の悪いブライス・ハーパー(フィリーズ)の名が出てきそうだ。

「ナイス」側の大谷選手に話を戻そう。個人的な意見を言わせてもらうと、大谷は他球団への移籍を真剣に考えるべきだと思う。

エンゼルスでの4度目のシーズンを終えたばかりの大谷は、球団と2年総額850万ドル(約9億6700万円)の契約を結んでおり、最終年となる来季の推定年俸は550万ドル(約6億2500万円)だ。来季終了後は年俸調停権を、2023年のオフにはFA権を獲得する(今年12月1日に期限を迎えるCBAの規定が変わらない限り)。

大谷は最近になってエンゼルスとの長期契約を受け入れる用意がある、という趣旨の発言をしている。だが私からのアドバイスは「やめておけ」だ。

エンゼルスは残念な球団で、何年も前からそうだった。大谷獲得に手を挙げた球団が多数あった中でエンゼルスが選ばれたのは、チームにとってラッキーだった。投打の両方をやらせてくれるのがここだったからだろう。だが投打の二刀流の資質が証明された今、大谷は、多くの野球選手が最大の目標とするワールドシリーズ優勝の夢を実現できる球団に行くべきなのだ。

これほどMLB選手が世界中のメディアに取り上げられる機会はほかにない。悲しいことにその球団はエンゼルスではない。大谷ほどの素晴らしい選手はアナハイムの田舎の球団ではなく、大きな市場に身を置くべきである。

今季投手としては9勝2敗だったが、もっと打線のサポートがあったら、13勝2敗でア・リーグMVPだけでなく、サイ・ヤング賞受賞のチャンスもあっただろう。

私から翔平へのアドバイスは、今の契約を全うしてエンゼルスに〝勝てるチーム作り〟をさせること。できなければよそへ移る。年俸4000万から5000万ドル(約45~56億円)以上も楽勝だろう。

絶大な説得力をもって投打両方が可能だということを証明した君なら、どこの球団だって毎日でも投打で起用してくれるはずだ。さもなければ、アーニー・バンクスのように本塁打王に輝く遊撃手で野球殿堂入りしながら、ポストシーズン出場経験がない選手に終わってしまう。

翔平よ、君はワールドシリーズの舞台にふさわしい。だがエンゼルスの選手でいる限り、そこに立つ日は来ないのではないだろうか。

■Robert Whiting 作家。米ニュージャージー州生まれ。『和をもって日本と成す』(1990年)で日本のプロ野球の助っ人外国人を描き、独特の日米文化比較論を展開した。この逆バージョンともいえる本コラム「サクラと星条旗」は2007年から好評連載中。


笑顔でファンを魅了する大谷(共同)

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