するりベント酒

新幹線で駅弁、定番のシウマイ外し「海の王様五ツ星べんとう」 「王様はスカスカだったが、後半俺が盛り上げる」1/1ページ

「海の王様五ツ星べんとう」(久住昌之氏提供)
「海の王様五ツ星べんとう」(久住昌之氏提供)

仕事で、久しぶりに東海道新幹線「ひかり」に乗った。さぁ、駅弁だ、本来のベント酒だ。

定番のシウマイ弁当はあえて外し「海の王様五ツ星べんとう」1280円を選択、プレミアムモルツの缶ビールとともに買う。

「三陸産あなご・陸奥湾産ホタテ使用」と書いてある。こういう海鮮系の駅弁を買うのは何年振りだろう。東京では、つい肉系の方が無難な気がしてしまう。

座席につき、テーブルを出し、弁当箱の包装を開け、包み紙やセロファンや割り箸の袋などを、全部ポリ袋に入れて座席下に置く。付属のおしぼりで手を拭き、さらに携帯の消毒スプレーを両手にシュシュと吹きかける。駅弁・コロナの段取りその1だ。

ほー。なかなかの見た目だ。

四角い弁当箱に、丸い「お椀」(そう書いてある)を入れたのは面白いが、周囲の空間がちょっと無駄というか、もったいないような気がするのは、俺がケチなのか。

お椀の中のご飯の上には、ズワイガニが敷いてあり、半分は焼きのりも敷いてある。その上にホタテ(小)が3個。そして真ん中ムギュッと置いてあるのがカニ味噌だ。

まずカニ飯部を、箸で掘り出すように取って食う。・・・うん。うまい。

続いて、ホタテを1ケ、口に放り込む。うん。小さいけど、歯応えもあり柔らかくもあり、風味豊か、これもよいね。

ここでビールをカシュッと開けて、ズビビビと飲む。本当はコップに開けて飲みたい俺です。

次に、いくら部分を半分、箸で飯を切るようにして、ごそりと取り、口に運ぶ。

おー、ヨイヨイ。おいしい。いくらの皮が固い人口いくらなんぞではない。生臭さもなく塩っぱかったりもしない。

どう食べ進もうか考え、具の味が混ざるのを避け、いくら飯を食べ切ってから、ウニ部に進み、これを平らげてからアナゴに向かう、という攻略法を選択。

ウニは、まぁまぁ。これはもう、ウニという食材の性質上、弁当で「すっごくおいしい!」というのはまず無理。マズくなければよし、としなければいけない。これはおいしい方と言えよう。

ビールを飲んで、お新香を食べようとして、

「ん?」

となった。お新香の透明のトレイの底が妙に浅い。指でトレイの仕切りをつまんで持ち上げてみると・・・下にただの空間が!

なーんだそれ。ここ、お新香トレイを2段重ねできるほど空いている。盛大な底上げ。これにはちょっとがっかりだ。カニ飯の周りの空間と合わせたらスカスカじゃありませんか。

この長細い弁当箱、空間を詰めればたぶん3分の2くらいにはなる。どうだろうこれ。このご時世に。

弁当の全体量は、多くはないが、少な過ぎるということはない。だがしかし。

最後の穴子を食べて、今度は自分の食べ進み方の失敗に気づく。この穴子、最後にするには、ちょっと小さく固く薄かった。穴子→ウニ→いくらと進んだ方が盛り上がった。しくじった。うーん。

さいわい、まだカニ飯が半分残っていた。海苔も。ここで海苔が俄然輝き出した。海苔の風味が後半のカニを盛り立てる。そこにお新香が活躍し始めた。真ん中のガリもいい。ホタテも一個残ってる。

残り物ががんばった。だんだん盛り返していく俺の弁当。ビールがうまいぞ。そう、人生山あり谷あり。今、手の中にあるもので幸せになった者の勝ちだ。(マンガ家、ミュージシャン)

■久住昌之(くすみ・まさゆき) 1958年7月15日、東京都生まれ。法政大学社会学部卒。81年、泉晴紀との“泉昌之”名でマンガ家デビュー。実弟の久住卓也とのユニット“Q.B.B.”の99年「中学生日記」で第45回文藝春秋漫画賞受賞。原作を手がけた「孤独のグルメ」(画・谷口ジロー)は松重豊主演で今年シーズン9(テレビ東京)。

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