軍事ジャーナリストの黒井文太郎氏はこの演説について、「英国は北京五輪の外交的ボイコット問題で米国と並んで先頭に立つなど中国の脅威を認識しているが、一般国民は『地球の裏側の話題』としか考えていない節があり、問題意識をアピールする意味もあったのだろう。また、中国語の語学要員や情報部員の活動費、サイバー専門家の人件費や機材費などの予算を確保する意味もあるのではないか」との見方を示す。
MI6に呼応するかのように、英BBCは立て続けに中国政府に批判的な報道を行った。習主席や李克強首相が新疆ウイグル自治区の弾圧に関与していたことを示唆する文書の写しが新たに公表されたと報じた。さらには中国が2016~19年の間に台湾人600人超を海外で逮捕し、中国に強制送還させていた疑惑も報じた。
米国と欧州連合(EU)は2日、中国問題に関するハイレベル対話を開催し、東・南シナ海や台湾海峡での「中国による一方的な行動に強い懸念を表明する」との共同声明を発表した。9、10日には米国主導の「民主主義サミット」がオンラインで開催予定で、台湾も招待されている。
欧米諸国が対中姿勢で結束するなか、岸田文雄首相は外交的ボイコットについて「それぞれの国で立場や考えがある。日本は日本の立場で考える」と述べるにとどまった。黒井氏は「現状のままでは、自由主義陣営から軽蔑されるだろう」と警告する。
首相の発信力が問われる状況だ。