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命を救う医師が抱えた「正義」と「葛藤」 気鋭のミステリー作家 初の本格医療小説 柚月裕子さん『ミカエルの鼓動』2/2ページ

――心臓外科医の生活についての感想は

「とにかく体力がないと持たないだろうなという印象です。取材に応じていただいた先生方は、自己管理のためにジムに通ったりスポーツをされたりしていらっしゃいました。また、ご家族の理解も必要なお仕事だろうなと、強く感じます」

――だれもが救われるために大切なことは

「救う、救われるは、自分の中にあるものだと思います。幸か不幸かというのと似ていて、その人がそう思わない限り、本当に救われたということにはならないでしょう」

――物語中に自死する人が複数出てきますが、いまそうした自殺志願者がいたら

「いまを生きてください、です。本当につらい人はいま、息をするのもつらいのだと思います。でも、そのいまを何とか過ごせば、明日のいまがやってきます。そのいまを、とにかく生きてくださいと言いたいです」

――コロナ禍における日本の現状は

「医療従事者も政治家も一般の人々も、みんなが何とかしなければと思い悩んでいるのですね。萎(しお)れかかった花を見て、日光も、きれいな水も、よい土壌も必要とはわかっていても、それぞれのアプローチが違うから、どうやってその花を救おうかと…。だれもが手探りの、もどかしい気持ちで暮らしているのではないかと思います」

■『ミカエルの鼓動』(文藝春秋・1870円税込)

大学病院で手術支援ロボット「ミカエル」の第一人者を自負する心臓外科医・西條のもとへ、ドイツ帰りの天才外科医・真木がやってくる。手術時における真木の手腕は、ロボット無用のスピードと正確さを見せつける。やがて、心臓に難病を抱えた少年の手術方針を巡って2人は対立する。そうした中、西條を慕う若手医師が自らの命を絶った。「ミカエル」に関する黒いうわさを暴こうとするジャーナリスト・黒沢は、西條の約束された将来に逃れようのない待ったをかける。

■柚月裕子(ゆづき・ゆうこ) 1968年、岩手県生まれ。53歳。2008年『臨床真理』で「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し、デビュー。13年『検事の本懐』で大藪春彦賞、16年『孤狼の血』で日本推理作家協会賞(長編及び連作短編集部門)をそれぞれ受賞。同年『慈雨』で「本の雑誌が選ぶ2016年ベスト10」第1位、18年『盤上の向日葵』で同年の本屋大賞第2位になる。他の作品に『あしたの君へ』『凶犬の眼』『検事の信義』『暴虎の牙』『月下のサクラ』など多数。

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