中小企業の場合、雇用者全体の給与総額を2・5%以上、教育訓練費を10%以上増やした場合、控除率を最大40%に引き上げる。賃上げに消極的な企業については一部優遇措置を受けられなくする「ムチ」も用意した。
この税制でサラリーマンにどこまで恩恵があるのか。第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは「企業は人員を減らすなど人件費を減らして1人当たりの賃金を上げることは可能でも、総賃金を上げることはハードルが高い。税制改正の中身には未知数な部分もあるが、足下では『オミクロン株』の懸念もあり、大きな期待はできないのではないか」との見方を示す。
日本の雇用の約7割を抱える中小企業には赤字経営も多く法人税を納めていないため、賃上げ税制の恩恵を受けられない。政府は補助金によって赤字の中小企業についても賃上げを支援する方針だが、どこまで広がるかが課題だ。
このところ原油や液化天然ガス(LNG)の価格上昇で光熱費や食品などが値上げラッシュに見舞われて家計を圧迫しており、多少賃上げがあったとしても実感を得るのは難しい。
経済ジャーナリストの荻原博子氏は「景気回復を目指すはずが、蓋を開けてみれば増税政策ばかりで、経済活動の妨げになる。賃上げに関しても、本来なら景気回復させ、人手が必要となる状況を作らなければならない」と指摘する。