インドネシアでも、村は荒れ果て、木々がマッチ棒のように倒れた。スメル火山から10キロメートル以内には8000人以上が暮らしていた。
インドネシアには火山が多く、火山の麓(ふもと)は土壌が肥沃(ひよく)で水はけがよく耕作に適しているので1000万人近くが住んでいる。どこかの火山が噴火すれば、多くの犠牲者が出るのは避けられない。
火砕流は日本の火山からも出る。91年に雲仙普賢岳(うんぜんふげんだけ)で出て、当時戦後最大だった43人の犠牲者を生んだ。これは頂上付近にあった溶岩ドームが崩れたことで火砕流を出したものだ。
九州・阿蘇からの火砕流は瀬戸内海を越えて中国地方を襲ったことがある。2017年に広島高裁が四国の伊方原発の運転を禁じる仮処分を出したのも、阿蘇噴火からの火砕流が海を越える影響を重視したためだ。
ところでスメル火山の今回の火砕流はその前に何日も降り続いた大雨のせいではないか、という学説が出ている。大雨で山頂にあった溶岩ドームが崩れて火砕流を出したという説だ。
たしかに溶岩ドームの大きさを比べると、大雨で体積が大きく減っている。