内田浩司のまくり語り

師弟はいつまでも師弟~お歳暮はビール券。それと…1/1ページ

内田浩司
内田浩司

お歳暮も毎度缶ビールばかりではと今年は師匠をうなぎ屋に誘ってみた。カウンター6席の小さな店で店主が目の前でうなぎをさばいて炭火で焼いた。手際のいい仕事もさることながら、うな丼も超絶に旨かった!

縁あって師匠、森山慎雄(24期・引退)に弟子入りしたのは18歳のとき。師匠にとってオレが初めての弟子だ。今までこんなに怖くて厳しい人に会ったことはなかった。

「今度の試験に受からなかったら…死ぬかもな」

人生であれほど追い詰められた状況は以後、経験したことがない。練習は夜明け前に始まり、終わるのは日が暮れてから。慢性疲労と睡眠不足、それにすさまじい緊張感のなか、日々練習に明け暮れた。足踏み状態が続いたが1次試験の1カ月前にポンっとタイムがでると、オレは51期に滑り込み合格した。競輪学校生活は天国でマジで卒業したくなかった(笑)。

デビュー後、順調にS級特進したまではよかったが急に金回りが良くなると酒や女遊びを覚えてオレは師匠を避けるようになっていた。

1年ほどたった頃、師匠から召集令状が届いた。

「明朝5時、平尾台に来い」

練習漬けは嫌だったが1年後、オレはなれっこないと思っていたS級1班になっていた。当時のS級1班は4300人中の130人だ。今と違い、全員が強かった。

それからは見える景色が全く変わった。師匠の強引過ぎる性格に反発したこともあったけれど、もしこの人の弟子になっていなかったらと思うと…それに弟弟子の吉岡稔真もあれほどの選手にはなっていないと思う。

「師匠、今年のお歳暮はビール券です。それと…これぇ~小遣いなんですけど、お孫さんにクリスマスプレゼントでも買ってあげてください」

「はっ、小遣い?」

「稼ぎがよかったときにもっと恩返ししときゃ良かったなって今頃あれなんですが…振り返ると師匠のおかげでいい競輪人生でした。本当にありがとうございました」

予定にはなかった涙があふれた。年を重ねるってのはこういうことなのかなって分かった気がした。

小倉ナイター最終日のS級決勝12Rはマーク戦が板についてきた小川と成長した林とのマッチレースで〔1〕↔〔7〕ー〔3〕〔4〕〔5〕だ。(元競輪選手)

■内田浩司(うちだ・こうじ)1962年8月26日生まれ。福岡県出身。83年4月に51期生としてデビューし、S級上位で活躍。2015年10月29日に引退。通算435勝、優勝34回(記念Vは92年門司記念など6回)。FI先行・吉岡稔真(としまさ=福岡・65期)元選手の兄弟子で連携は多数。実直な性格と厳しい指導から〝鬼軍曹〟として恐れられていた。夕刊フジ競輪面にコラム『当てちゃる券』を執筆。『まくり語り』を連載中。競輪祭では特別コラム『小倉競輪祭 なう&リメンバー』を執筆。

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