無から一の音楽を生み出し、研ぎ澄ませ、完成形に導く4人。この4人が、音楽をきらめかせていることがつまびらかになる。例えば「トウー・オブ・アス」。収録された楽曲を知る身としては、変声で歌ったりハーモニーをあえてずらしたりするポール・マッカートニーとジョン・レノンに冷や冷やする。どこでどうなって、初期のテークが最終テークになるのか。そんな謎めいた過程も垣間見えてくる。
音楽と同じぐらい、4人にとって貴重な存在だったのはキーボードのビリー・プレストンだ。彼の参加でビートルズはグルーヴ感を確実に取り戻した。「ドント・レット・ミー・ダウン」や「ゲット・バック」のつなぎを、ビリーのエレクトリック・ピアノが見事に埋めた。彼なしに、このセッションは完成しなかったことが分かる。
映画「レット・イット・ビー」ではライブシーンは連続で歌っているように映されていたが、実際は撮影のため、1曲1曲、カットがかかっていたことが今回分かった。
いずれ世界がビートルズを直に知らない人々ばかりになっても、ビートルズの音楽は関心を集め続けるであろう。未来永劫(えいごう)の傑作である。