穏やかな天候だった第90回大会は、3年連続で〝花の2区〟の大役を務めた設楽啓を5区に起用するほど、東洋大は豪華な布陣だった。
「前年に入学した服部勇馬(2年)が出雲で区間賞を獲得するなど成長していたので、監督が起用したと思います。2年連続で1区の田口雅也(3年)が、3位ながらも歴代9位の好タイムで流れを引き寄せ、勇馬が2位で悠太に襷をつなげると、あとはゴールまでずっとトップでした」(佐藤)
箱根ラストランの設楽兄弟だけでなく、5人が区間賞を獲得した。復路の7区でルーキーの服部弾馬、8区では高久龍(3年)、アンカーの大津顕杜(3年)はMVP(金栗四三杯)にも輝く。
東洋大は復路を新記録で制し、2年ぶり4度目の優勝を果たした。
「熊本市立千原台高校出身の大津は、谷川嘉朗コーチの後輩だったので獲得に動いてもらいました。栃木県の那須拓陽高校出身の高久は、指導していた先生から『間違いなく距離の長いロードが向いていますよ』と紹介されました。話をしても気持ちが強くて、『伸びるだろうな』と思いましたね」(佐藤)
高久は2人の恩師の想像通り、今年の福岡国際マラソンで5位(日本人3位)に入賞し、23年のMGC(マラソングランドチャンピオン、24年パリ五輪の選考会)出場権を獲得している。
次々に世界を狙えるトップランナーが現れるなか、意外にも三大駅伝の1つ、伊勢路だけ制覇していなかった。(敬称略)