米大リーグは昨年12月から1カ月以上、オーナー側が選手を締め出す「ロックアウト」が続いている。新労使交渉が締結されないと、フリーエージェント選手との交渉も進まないし、春季キャンプやオープン戦の日程に影響が出てくる。
明るい話題は、女性の進出か。米スポーツ専門サイト「アスレチック」によれば、ヤンキースは傘下のマイナーリーグ(1Aタンパ)監督にレイチェル・バルコベックさん(34)の起用を決めた。大リーグ傘下の球団では初の女性監督が誕生する。
元ソフトボール選手で、2012年にカージナルス傘下のマイナー球団でコンディショニングコーチに就任。他球団やオランダで指導経験を積み、19年にヤ軍傘下で女性初の打撃コーチとなった。当時、米メディアの取材に「ゴールみたいに祝福されるけど、まだまだ学ぶことや達成したいことは多い」とコメントしていた。
メジャーで初めてベンチ入りした女性コーチは、20年にジャイアンツ助監督となったアリッサ・ナッケンさん(31)。ヤ軍と同じア・リーグ東地区のブルージェイズも、元ソフトボール選手のジェイミー・ビエイラさんを球団史上初めて傘下の打撃コーチに抜擢(ばってき)するようだ。
日本球界との大きな違いは、選手としての実績を重視しないことだ。日本球界には依然として名選手の方がコーチに就きやすいが、大リーグで問われるのは指導力や知識。データや映像も駆使できる近年は、目の前で手本を見せなくても助言できるようになっている。各選手に臨機応変に寄り添うという点では、自身の技術にこだわりを持つスター選手の方がコーチに不向きという見方もあるほどだ。
野球に限らず、日本のプロスポーツ界には「プロレベルでプレーできなかった人は指導も、解説もする資格はない」という考えが根強い。コーチどころか、米男子のプロスポーツ中継で増えている女性解説者が誕生するには時間がかかるだろう。ジェンダーレスの意識が低いことだけが妨げではない。 (元全米野球記者協会理事・田代学)