国土交通省は電車内で起きた乗客刺傷事件の再発防止に向け、対策に本腰を入れている。新造する列車に防犯カメラ設置を義務付けるとの方針を打ち出し、事業者や有識者と協議を開始。乗客にも協力を求めている。
国交省は昨年12月に安全対策を発表。事業者に防犯カメラ設置を義務化し、性能基準などを検討するとした。乗客には、現状では実施例がほぼない手荷物検査への理解を促し、車内の非常通報装置を確認して緊急時はためらわずに使うよう呼び掛けていく。具体的な方法を検討する会合も開催し、鉄道事業者や有識者らが参加した。
課題は多い。もともとカメラ設置に積極的なJR各社や首都圏の大手私鉄に対し、赤字経営の多い地方の鉄道は及び腰だ。費用負担の問題や、車両数が少ない編成を義務化の対象外とするかどうかが焦点となる。
手荷物検査はさらにハードルが高い。JR東日本の深沢祐二社長は昨年12月の定例記者会見で「乗客数や場所の問題があり、単純に実施するのは難しい」との見解を示した。大きな事件のたびに浮上しては消えていくアイデアなだけに、どのような条件なら実行可能か模索が続いている。