
正月というのは、得てして妙なことが起きるものだ。
それも、どちらかというと、悪人ではなく善人と呼べるような人たちが、妙な目にあうことが多いような気がする。
おそらく、年末年始という日本一の大イベントに、真っ当な人たちの通常生活のリズムが崩れ、いろいろとバランスが悪くなるのであろう。
だから、私のような、働いているのか遊んでいるのか分からないような、普段からいい加減で身勝手な生活を送っている者は、もともとのバランスが崩れきっているので、意外にそういう目にあわない、またはうまく回避する。
この年末年始、私の周りでもやはり善人たちが涙を流した。
私は正月明けに真っ当な仕事をしている友人と酒を飲んだ。
彼はひどく疲れた様子だった。聞くと、元旦から実家に帰省したが、酒が入った揚げ句に親戚の一人と取っ組み合いをしたという。
けんかの理由は他愛のない「生き方論争」だったそうだ。
そして、その帰り道、雪がふぶく中、そのけんかをした親戚は、奥さんが運転する車で田んぼに落ちたという。彼らはJAFを呼んだものの3時間待ちだといわれ、私の友人は仕方なしに雪の中、取っ組み合いをした相手を救出することになった。
またそのけんか相手は、ありがとうのひとつも言わなかったという。
そしてUターンラッシュの高速では、後ろから同じような帰省帰りの家族連れに、軽い追突事故を起こされたという。