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日本眼科学会や日本眼科医会などでつくる日本眼科啓発会議は昨年から、加齢によって目の機能が低下した状態を「アイフレイル」と名付け、早期受診などの対策の呼びかけを始めた。
近年では、加齢に伴い心身の働きが弱り要介護になる手前の状態を「フレイル」と呼び、関連して口腔機能の低下は「オーラルフレイル」と呼ばれるようになった。これらの概念と同じように、アイフレイルは健康な目から視覚障害に至るまでの中間の状態だ。
しかし、目の健康に対する意識は低く、なかなか眼科検診までつながらないのが現状。アイフレイルに詳しい順天堂大学医学部眼科学講座の平塚義宗先任准教授=顔写真=はこう話す。
「40歳以上に行われている特定健診の中で眼底検査は、血圧や血糖が一定条件を満たし、医師が必要とした人のみ行われるので、地域住民の82%の人が受けられていません。また、失明原因1位の緑内障は、初期では症状がないので発症していても約9割の人は診断されていないと推定されています」
加齢と共に増加する主な眼疾患は、「緑内障」「白内障」「加齢黄斑変性」「糖尿病網膜症」など。どれも初期には自覚症状が少なく、10年くらいかけて徐々に進行する。しかし、検診で眼底写真を1枚撮るだけでも、かなり高い確率で早期発見ができるという。
日本眼科啓発会議は昨年6月、40歳以上の男女約1万3000人を対象に調査を実施。うち約9割の人は「小さな文字が読みにくい」「目が疲れやすい」「視力が低下している」など、目に何らかの気になる症状があると回答。その一方で、目の検査を受けている割合では、約4割の人が「ここ3年は受けていない」と回答している。
何らかの症状があっても眼科を受診しないのは、「年のせい」としてしまう人が多いからだ。そこで同会議は、アイフレイルを疑う目安として「自己チェックリスト」(別項)を作成した。2つ以上該当したら眼科の受診を勧めている。
「アイフレイル予防の目的は、目の病気を治すためだけではありません。アイフレイルは、フレイルやオーラルフレイルにも影響を及ぼし、健康寿命を短縮させるからです。海外の研究では視覚障害があると、転倒・骨折のリスクが2・5倍、うつ症状のリスクが約2・7倍増加するという報告があります」自己チェックリストの項目に該当しない人でも、40歳を過ぎたら一度は眼科検診を受けてもらいたいという。 (新井貴)